会長あいさつ

第11回日本がんサポーティブケア学会学術集会
会長 矢野 真吾
(東京慈恵会医科大学 腫瘍・血液内科)
心のケア Peace of mind in Cancer Care
がん治療の進歩とともに、患者のQOL(生活の質)を支える『サポーティブケア』の重要性は、もはや医療の周辺的なテーマではなく、中心的な課題として注目されています。私自身、がんのサポーティブに携わってきた中で、悩み、学び、そして支えられてきました。その想いを込めて、日本がんサポーティブケア学会第11回学術集会 (JASCC26)を2026年5月16日 (土)・17日 (日)に富山県民会館にて開催いたします。
JASCC26は、古くから薬の産地として有名で、薬売りの伝統が息づいている富山県を開催地に選びました。多くの医療従事者、研究者、患者支援団体の関係者が一堂に会するJASCC26を、立山連峰が見守るこの富山の地で開催できることを大変光栄に思います。
令和5年のわが国において「がん」による死亡は全死因の24.3%を占め、年間死亡者数は38万2千人でした。がん医療の進歩により入院治療から通院治療へシフトされ、平均在院日数は2002年の36日から、2020年は20日になっています。第4期がん対策推進基本計画には、がん患者の状況に応じて緩和ケアが診断の時から適切に提供されること、良質なリハビリテーションの提供が確保されること、居宅においてがん患者に対し医療を提供するための連携協力体制を確保すること、医療従事者に対するがん患者およびその家族の生活の質の維持向上に関する研修の機会を確保することなどが示されました。がんサポーティブケアは学際的な研究領域であるため、多種職がそれぞれの専門的な視点を持ち寄り、問題解決に向けて柔軟なアプローチを提供することが必要になります。
JASCC26では、がん患者および家族の身体的、精神的、社会的なケアを統合的に議論し、多様化した治療のアプローチに対応できる実践的な支援方法とそれを支える医療従事者のネットワーク構築について考えていきます。また、患者および家族に対する心のサポートにも焦点を当てたいと考え、学術集会のテーマを「心のケア」としました。がん支持医療に関する最新の研究報告、シンポジウム、ワークショップ、パネルディスカッション、症例検討、特別企画に加え、「心のケア」について専門家による教育セッションを企画します。「心のケア」は、時に医療従事者にも必要なことがあります。患者・家族そして本学術集会に参加される皆さまが「前向き」なることを目指します。
がんサポーティブケアをさらに発展できるように、本学会での議論を楽しんで頂きたいと願っております。そして、学会が終わりましたら、富山を満喫していただければ幸いです。
富山の地でみなさまにお会いする事を心待ちにしております。