会長挨拶

会長 秋岡 親司

第33回日本小児リウマチ学会総会・学術集会
会長 秋岡 親司
(京都府立医科大学 小児科学教室)

みえないものを診るために より総合医的に、もっとエキスパートとして

リトリート、この言葉に出会ったのは20年前、Dana-Farberの掲示物においてだった。Cape Codで開かれるBiologyの小さなmeetingの広報で、Scientific Retreatと書かれていた。同じフロアの堤君が、リトリートは軍隊用語で撤退という意味だがこのような使われ方もする、と教えてくれた。Wikipediaで調べると、“世界のおもな宗教では、リトリートが行われてきた”とあり、“忙しい日常から離れて、ひとり或いはグループで深く内省する活動”とある。その場や期間も意味するようだ。

内省、この言葉も難しい、反省とは異なる。自分の考えや言動を省みること、ビジネスでは現場から離れて自分の言動を振り返ることを意味する。過去の言動にふれることで改めて新たな価値や意義を見出し、みえていなかったもの・真理に近づき、気付く。真実を求める道は創造的であり、明日に繋がる営みである。宗教では、伝道師により、神の言葉が導きとなり気付きをもたらす。サイエンスではどうだろう?論文?講演?サイエンスに真理はあるが、神の言葉を直に聞いた者はいない。しかし、伝道者は存在する;SRやRCTに神を見たと話す者、これこそが天台烏薬と触れる者、錬金術を語る者、COI開示を免罪符に俗世の利欲に血道を上げる者。。。我々、求道者はその中に身を置き、それが邪教の類いなのか、風説の流布でないのかを判断しなければならない。放棄すれば全体主義の沼に落ち、知は暴力となり、患者は苦しむ。

令和6年10月、第33回の日本小児リウマチ学会学術集会を京都で開催させて頂きます。今回は「みえないものを診るために」をテーマに、リトリートを行います。学術集会では多くの情報にexposeされますが、参加者自身が主体的に課題を見つけ、提起することが何より重要です。多様な価値観に出会うことが常ですが、理解や議論を行うためには、自身のスタンスを定めなければなりません。事前にoriginに触れ、今に至る歴史を知り、改めて自分で仮説を立て、議論のポイントを整理し直すことが、結果として「みえないものを診る」力に繋がると信じています。本学術集会ではより一般演題に注目し、事前に発表データを公開させて頂き、学会場では議論の段階から始める形にしたいと考えています。例年より1〜2週間早めの日程で進めること、どうぞご容赦下さい。また、サブテーマを「より総合医的に、もっとエキスパートとして」としますが、所謂、総合診療医の先生にお任せするのでは無く、多分野の先生にお話を頂く予定です。自分にとって必要な総合医的な力は個々人で異なると思います。エキスパートについても同様です。参加者自身が内容を取捨選択頂くことも一つの学びのプロセスと思います。様々に繰り広げられる議論と知の集積が、参加者のこれからの発展に役立つことを願ってやみません。本学術集会が真のサイエンスを議論する場、リトリートとなります様、ご協力の程、宜しくお願いします。