プログラム質問・回答一覧

会期中にご質問いただきました内容の一覧となります。
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Q.
Thank you very much for your beautiful slides. Today, you showed three guidelines, namely French guidelines, DAHANCA guidelines, and the international guidelines. I can find out that there is a big difference between French guidelines and the international ones, especially on the volume lower dose. You are very famous French leader and also the very famous international leader. Now, question! When you use the guidelines, which guidelines do you usually employ, French guidelines and the international ones?

A.
Thank you for your question.

I wrote the international guidelines when I was still working in Belgium. It’s a collaborative work with head and neck radiation oncologists and head and neck surgeons from all ever the world. I’m definitely using these guidelines and I’m teaching my fellows and residents to use them.

I was obviously aware of the French guidelines. I strongly believe that these guidelines do irradiate unduly too much of normal tissues. An ongoing study in Denmark retrospectively looked at the percentage of loco-regional failure in patients delineated with the international guidelines, with patients treated in a previous period without any guidelines. No increase in loco-regional failure is observed.

Don’t hesitate to contact me again if needed.

Regards.

Q.
貴重なご講演ありがとうございました。全国の新型コロナウイルス患者数のピークは4月26日であり、ECMO装着患者数、人口呼吸器装着患者数のピークは4月27日であり、患者数と重症化のピークはほとんどずれていませんが、この点についてはいかがお考えでしょうか?

A.
第1波の新規感染者数のピークは4月11日です。
以下のサイトなどをご参考ください。
新規感染者が発生してから遅れて重症化してくるという意味です。
https://gis.jag-japan.com/covid19jp/

Q.
大変、お忙しい中、貴重なご講演を頂き、ありがとうございます。ご講演の中に、中国が、第一派、欧州が第二派、現在は、米国、ブラジルなどに、広がっているとの、お話が、ありました。これらの新型コロナの遺伝子には、すでに、変異が、生じているのではないでしょうか?京大の本庶佑先生は、新型コロナの遺伝子は、容易に、変異すると言われています。現在、世界で、ワクチンの取り合いが、生じていますが、遺伝子変異に、合致した日本人のためのワクチンを、早急に、日本で、開発する必要があると思いますが、いかがでしょうか?

A.
ウイルスは少しずつ変異をしておりますが、病原性や感染性に関わる変異が起こっているのかは不明です。
また、ワクチンについても、現時点ではワクチンへの適合性が変わるほどの変異は確認されていない状況かと思います。

Q.
日本のがんの放射線治療の始まり、耳鼻科(頭頸科)の始まりと、その後の歴史を、教えて頂き、ありがとうございます。 質問です。1。三井報恩会のRa 5gは、ラジウム小線源に直すと、何人分でしょうか?

A.
ラジウム小線源はRa 1mg 2㎎ 3㎎のラジウム針と、Ra 10mg 20mg のラジウム管がありました。線源は繰り返し使うので、何人分とは計算できません。一番忙しい時に年間4000人の患者さんを治療していますので、総計数万人以上の患者さんに治療しています。
一回の治療で、一人の患者さんの病状に合わせて、数本から十数本用いています。通常1週間くらい病巣部に留置して、治療し終わると線源を抜きます。

Q.
2。癌研では、当時の海軍 東郷平八郎元帥の喉頭癌の治療も、されたと聞いています。治療は、このラジウム(針、管)を使われたのでしょうか?

A.
東郷平八郎元帥の喉頭がん治療が、癌研で治療されたかどうかは私は、知りませんが、喉頭癌ですから、ラジウム針が用いられたと思います。以上です。ご質問有難うございます。

Q.
詳細なご講演、ありがとうございました。
1。EB関連胃癌の患者さんが、一番多い様ですが、上咽頭がんと合併する症例は、どのくらいあるのでしょうか?また、EB関連胃癌の発症機序については、上咽頭がんの発症機序と、同じところが、あるのでしょうか?

A.
大変興味深いご質問ありがとうございます。過去30年ほどの当科の上咽頭癌患者さんでEBV胃癌を発症した方はいらっしゃいません。上咽頭癌は東南アジアなど多発地域がありますがEBV胃癌は多発地域はなく、世界中どこの地域でも胃癌の10%程度がEBV感染によるとされています。学会等でも上咽頭癌と胃癌を合併しやすいという報告は聞いたことがありません。同じ上皮系の癌ですが、上咽頭癌ではLMP1という癌遺伝子が発現するのに対し胃癌では発現していません。そのかわり、EBV遺伝子発現パターンが異なります。エピジェネティックな修飾、特に著しいメチル化がEBV胃癌では認められることが発がんと関連していると言われています。

Q.
2。EBウイルスに対するワクチンは、できていますか?

A.
EBVに対するワクチンはできていません。ウイルス複製を抑える薬剤が開発されたことがありますが、伝染性単核症に対する臨床試験で有効性が示せなかったため、その後は開発が進んでいません。

コメント
本当に素晴らしいご講演を頂き、ありがとうございます。 先生のご講演で、心理的安全性の重要性が少しは分かったように思います。また、Daily Huddleが、これほど、重要とは、驚きでした。ウイズコロナの新時代です。今後、高い生産性が、求められます。「心理的安全性」は、時代を象徴する合言葉になるのではないでしょうか?

Q.
悪心嘔吐の項で教えて頂いたオランザピンですが、高齢者の術後のせん妄にも、有効でしょうか?

A.
ご質問ありがとうございますせん妄にはいくつかの誘因がありますが、オランザピンは睡眠をしっかりとれる効果があり、睡眠のリズムが狂うことによるせん妄はある程度抑えられるかもしれません。
10mgで使用すると眠気が強く出て転倒のリスクもあるので使用量には注意しましょう。

Q.
1。NTRK陽性例は、どの位経験されていますか?先生の所の頻度は、どのくらいでしょうか?

A.
当院では110例ほどのゲノムパネル検査の実績(検体不良例除外済)がありますが、まだNTRKが検出されたことはありません。なお、その中に分泌がんは含まれておりません。

Q.
2。最近の重粒子線治療も、良い適応かと思いますが、どのように、お考えですか?

A.
特に腺様嚢胞がんなど、手術で十分なマージンをつけにくく、化学放射線療法としての効果に疑問がある組織型では積極的に検討してよい治療オプションと捉えています。論文から汲み取れる治療成績の差はかなり縮まりつつあるように思いますが、実際のところ、どちらが早く治療を開始できるか(重粒子線施設へのアクセスがどうか、素早く手術枠を確保できるか)という施設事情もかなり影響するように思います。最寄りの重粒子線施設に紹介した場合の大まかなフローを予め確認しておくことが重要と考えます。

コメント
NCCガイドラインのご紹介のところで、新たな治療を開発する必要が、あるとのお話が、ありました。本学会で、ご講演がありました日本発の新規治療BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)も、良い適応のようです。

Q.
JCROS 1402 HN:素晴らしい治療成績のご報告、ありがとうございます。最近は、スキャニング照射による強度偏重照射、回転ガントリー法も、行われているとの、お話でした。このJCROS 1402 HNでは、照射法は統一されているのでしょうか? 或いは、新しい照射法も、含まれているのでしょうか?

A.
ご質問誠にありがとうございます。
今回お示ししましたJCROS1402HNのデータは、ほとんどの症例(99%)で従来の照射法である「パッシブ照射法」を用いた治療成績です。
講演の中で言及させて頂きましたように、現在、より精細な線量分布が得られるスキャニング照射の導入が進んでおり、回転ガントリーも開発され臨床導入されてきています。
このような新しい照射技術を用いることで線量分布がより最適化され副作用の低減が更に進むことが期待されております。
現在、データ集積が進んでおりますので、今後、新しい照射法を用いた重粒子線治療の治療成績が発表されていくものと思われます。

Q.
1。最近、よく耳にするECMOを使用した症例、また、容易したけど、実際には、使わずにすんだ症例は、各々、どの位ありますか?

A.
ECMOを準備するかは麻酔科側の意向が大きくかかわってきます。
以前在籍していた京都医療センターでは進行癌がかなり多くECMOを使用した症例は15例、準備したけど使用しなかった症例は1例のみでした。
京都大学の麻酔科はかなり周到に準備するため、ECMOを使用した症例は1例、準備したけど使用しなかった症例は15例くらいありました。

Q.
2。段階的気管形成の症例提示が、ありましたが、血管吻合による複合遊離組織移植による一期的気管再建の症例は、ありますか?耳介舟状窩の軟骨を、裏打ちした一期的気管再建の症例を、持っていますが、結構、うまく、行きます。

A.
基本的に人工気管以外では一期的再建を行っておりません。

Q.
3。人工気管について。第一医科様からのプレスリリースでも、もう、保険適応(上市)される頃と思いますが、申請は、既に、終わりましたか?

A.
薬機申請はまだ行っておりません。

Q.
1。人工神経使用の際の長さについては、どの程度が、適応でしょうか?

A.
本邦のものですと、ナーブリッジ®に関しては、保険適応としては40mm以内となっております。リナーブ®は神経欠損長による適応は特にないようです。
また、欧米の中空の人工神経は30mm以内が適応となっていることが多いようです。臨床試験の結果などをみると、長さが長くなれば神経移植に比べて成績が劣るようですので、総合的な判断が必要かと考えます。

Q.
2。初期のナーブリッジは、一度、回収されたと、お聞きしていますが、回収前の症例も、入っていますか?

A.
回収前の症例も含まれております。ただ、回収された理由が、社内での製造記録の不備ということでしたので、回収前後での製品自体の内容変更はありません。治療成績には影響がないと考えます。

Q.
3。ご講演でも、述べられましたが、宮内先生の神経ワナを使った再建が、現在、一番、良好な結果だと思っていますが、いかがでしょうか?

A.
反回神経の欠損が極めて軽度な場合、頸部郭清時に神経ワナを切除せざるを得なかった場合を除いて、宮内先生が提唱されました神経ワナを使った再建が、反回神経の欠損の程度に関わらず安定して可能な術式ですので、わたくしも第一選択と考えております。

Q.
甲状腺未分化癌研究コンソーシアムなどのご報告、また、ご講演での、最近の免疫療法も加味した好成績の症例のご報告、ありがとうございます。さらに、良い成績を、得るために、通常の放射線療法に代わり、重粒子線治療や、ホウ素中性子捕捉療法についても、検討が必要かと思っていますが、いかがでしょうか?

A.
ご質問ありがとうございます。
放射線療法の発展はご指摘の通り素晴らしいものがあります。 重粒子線は、周囲の重要臓器への影響から頸部には使いづらいように思います。
ホウ素中性子補足療法での短期治療経験が過去に報告されていたように思います。
積極的検討が重要だと思われます。

Q.
医療機器の開発について。新たな東病院の組織、NEXTのご紹介、ありがとうございました。今回、ご提示いただいた機器は、どのようなコンセプトで、開発されたものでしょうか?高額ですか?

A.
回答:コンセプトは、内視鏡下経口的手術治療用の機器として開発しましたが、開発の段階で、経口的のみではなく、頸部手術への対応も視野に入れた機器となっています。ハンドルと先端のセット(別々で購入可能)で1本の定価が おおよそ¥200,000 です。
上記回答させていただきます。

Q.
コメントです。 本日のご講演では、触れらませんでしたが、最近の重粒子線治療は、非常に良い治療結果を、報告しています。ご存知の通り、ONB T4a/bでは、重粒子治療の優越性も報告されています(Anticancer Res 2018)。さらに、斜体部の軟骨肉腫、脊索腫に対しても、好成績を報告しています。国立がんセンターでは、重粒子線治療が、行われています。集学的治療が、必要ですが、ラディザクトや重粒子線治療が、必須になるではと思っていますが、いかがでしょうか?
(京都には、重粒子線治療ができる所はないようですね。)

A.
内視鏡下の頭蓋底手術では広い安全域がとれないため、術後放射線治療は重要になってきます。
しかし、局所進行の大きな腫瘍に関しては、重粒子線治療も含め、照射後の遺残性腫瘍に対するサルベージ手術はリスクが高いこと、そしてやはり局所の制御は切除可能症例では手術が勝ると考えます。
ただし、T4症例では内視鏡単独では切除が難しく、開頭手術との同時併用手術が必要となってきます。
逆に小さな腫瘍、特に嗅神経芽細胞腫においては、嗅覚温存手術が内視鏡下では可能というメリットがあると考えています。
斜台中心に発生する軟骨肉腫、脊索腫も最近の内視鏡技術では安全に切除可能ですし、良好な局所制御を得る以外に組織診断をつけるという役割がある点で手術は重要と思われます。

Q.
TOVS、増えて来ていますね。1。神経鞘腫の症例について。脱落症状、起源神経は?

A.
脱落症状は認めておりません。おそらく末梢の咽頭神経叢由来ではないかと思います。特に名前がつくような神経からではないとは思います。

Q.
2。ルビエールリンパ節について。放射線療法は、どのように、お考えですか?

A.
回答:ルビエールリンパ節単独の転移で切除可能であれば切除を検討いたします。周囲への癒着が疑われるなら外切開でのアプローチを行います。
放射線も考慮いたしますが、あまり制御率は良くないといった印象を持っており、術後照射に用いることがあります。照射既往がある例も多いため、切除しかないということもよくあります。

Q.
いつもながらの分かりやすいご講演、ありがとうございます。1。ORATOR studyについて。ロボット手術で、Noでも、全例、頸部郭清をやって、いるようです。これを、裏ずける(ビッグ)データーは、あるのでしょうか?

A.
ご質問頂き有難うございます。
手元にデータは持ち合わせておりませんが、学会等で見聞きする限り、海外ではロボット支援手術だけでなく、N0症例でも全例予防郭清を行うのが一般的のようです。日本のように表在癌を診断治療する文化がないこと、p16陽性中咽頭癌が多い、すなわち転移しやすいことが、その背景にあるのではと思っております。

Q.
2。ロボット手術の今後の適応拡大については、どのようにお考えですか?

A.
韓国、米国、東南アジアでは甲状腺でもロボット支援手術が普及してきており、今後は日本でも適応拡大を目指す流れになるのではと考えております。
保険収載に関しては、日耳鼻として2022年の診療報酬改定時の保険収載を目指して頂いています。既存治療に対する優位性を示せる領域ということで、まずは中咽頭癌での保険収載を目指すのが現実的かと思っております。

Q.
3。先日の特別公演で、ダビンチに触覚を、という、ご講演がありました。先生、触覚を持ったダビンチ、見たこと(使ったこと)は、ありますか?

A.
残念ながら触覚を持ったダビンチはまだ触ったことがありません。機会があれば是非と思っています。

Q.
日本発の新しい治療法を教えて頂き、ありがとうございます。耳鼻科医です。1。初回治療で、腫瘍が、残存することが、あるようです(抄録)が、再度のBNCTは、可能でしょうか?2。企業治験の適応は、頭頸部癌です。今だに、良い治療方法のない甲状腺未分化癌はいかがでしょうか?ステボロニンの集積は、あるのでしょうか?

A.
原子炉を用いたBNCTで、2-3回照射はかなり経験され報告されております。CRT後の再発症例であっても、再度のBNCT照射は可能です。
甲状腺未分化癌に関してのBNCTやFBPAの取込に関しては報告がありませんが、我々としても是非行ってみたい疾患です。そのような症例がございましたら是非ご紹介ください。

コメント
CBS(carotid blowout syndrome)のご講演、ありがとうございます。最後のスライドで、まとめていただきましたが、全周性の頸動脈浸潤でも、SBRTが有効と、ありました。大変貴重なご報告と、思います。ありがとうございました。

Q.
耳鼻科医です。腫瘍は、低酸素状態と、言われています。最近、この低酸素状態を、F-MISO PET或いはHIF-1で、ある程度、わかるようになりました。そこで、これらの低酸素状態の腫瘍に、先生の温熱療法を加え、これらの検査をマーカーとして、腫瘍の酸素化を測ると、併用する治療効果が、上がるのではないかと思います。具体的には、最近の免疫療法との併用が、一つの、良い適応ではないかと考えていますが、いかがでしょうか?

A.
ご質問頂き、どうも有難うございます。
御指摘のように腫瘍の低酸素領域をF-MISOなどを用いて画像化し、温熱療法を追加すべきかを判定するために用いることは、ぜひ検討したい点であります。
温熱療法を加えるべき症例群を選別するためのマーカーの重要性を感じています。
免疫療法と温熱療法の併用に関しましては、発表では割愛しましたが、 温熱によるりHeat shock protein(HSP)を介した抗原提示能の増強・免疫賦活が、基礎的に示されています。
ICIとの併用に関する臨床試験が開始されるようですので、今後の進展に注目しています。

Q.
耳鼻科医です。 1。α線密封小線源治療は、日本では、どこで、行われているでしょうか? 

A.
回答:まだ治験の段階ですが、国立がん研究センター中央病院放射線治療科、東京医科歯科大学病院放射線治療科、東北大学病院放射線治療科で放射線治療後の再発頭頚部腫瘍に対して施行しております。

Q.
2。先生、血管肉腫に対するBNCTも、やってられると、お聞きしました。今回のご発表も、α線です。α線治療で、破壊された腫瘍は、免疫原性が高いと言われているようです(抄録)。それでは、小線源療法、BNCT療法で、最近の免疫療法と併用すると、さらに高いabscopal効果を、期待できますでしょうか?

A.
我々もそれを期待しております。実際α線密封線源の動物実験段階ではAbscopal効果が頻回に観察されております。またBNCTでも血管肉腫および悪性黒色腫を対象しておりますが、Abscopal効果を期待しておりますが、BNCTの1回線量が非常に高いので、果たして有効な抗原が露出されるかどうかまだ検討することばかりです。
ご質問ありがとうございました。

Q.
多くの症例のご報告、ありがとうございました。
1。動注ですが、ハイポはお使いですか?

A.
1. 動注化学療法の際にハイポ(チオ硫酸ナトリウム)は2g/bodyを動注化学療法終了直後に静注しています。実際の治療スケジュールは照射の15分前に抗がん薬の投与を開始し、投与中に照射を行い、CDDPの動注が1時間で終了したところでチオ硫酸ナトリウム2gを投与します。

Q.
2。顎骨壊死を、予防したいのですが、何か良い方法は、ありますか?スペイサーは、いかがでしょうか?

A.
2. 顎骨壊死はやはり治療後のQOLを低下するため避けたいところです。この治療も10年以上行っていますが5年以上経過したあたりから骨露出、疼痛、腫脹などの症状が生じる症例があります。動注化学放射線療法後は基本的にはかかりつけの歯科医院で歯周治療を依頼します。骨髄炎、骨髄壊死を防ぐためには徹底的な口腔清掃、メインテナンスが必要と思われますが、口腔清掃状態の不良、あるいは義歯性潰瘍から骨髄炎・骨髄壊死を発症することがあります。スペーサは使用していません。

Q.
3。ご存知の通り、サイラ(iPS研究所)の山中伸弥先生のグループが、NKT細胞を、動注する新しい治療方法を開発中です。近未来に、新しい武器が、登場します。

A.
3. 山中伸弥先生の動注療法については申し訳ありませんが知りません。頭頸部領域に応用できれば新たな治療法となると思います。

Q.
IMRTの進歩を、教えていただきありがとうございました。耳鼻科医です。1。上咽頭癌での副作用の聴力低下が、気になります。最近のラディザクトを使用すると、発生率は、下がりますでしょうか?

A.
【回答1】ご質問ありがとうございます。あくまで私見ではありますが、放射線腫瘍医の立場から回答させて頂きます。
上咽頭癌の放射線治療後の聴力低下は放射線治療の影響のみならず、シスプラチンの化学療法の影響などの複合的な要因が考えられます。内耳などのリスク臓器の照射線量を適切に低減することが出来れば、放射線治療の影響による聴力低下についてはそのリスクを減らすことが可能であると考えます。ラディザクト等の最新の治療装置であれば、そのような治療計画の作成と実施に関して、より有利だとは思いますが、治療装置を扱う医療者が、病変部とリスク臓器に対して適切な線量処方が出来るかどうかが重要だと思います。さらに、治療後の耳鼻科的な中耳炎等に対するケアも重要な要素と考えます。

Q.
2。中咽頭癌での顎骨壊死について、予防することは、できますでしょうか?例えば、スペーサーを作るのは、いかがでしょうか?

A.
【回答2】中咽頭癌においては、口腔内スペーサーを用いても下顎骨と原発巣の中咽頭癌の間隙にスペースを設けることは出来ないと思われますので、端的には顎骨壊死の頻度は下がらないと予想します。ただし、スペーサーを用いて口腔への照射線量を低減させる事で小唾液腺を機能を守ることが可能と考えられます。唾液分泌の改善は間接的に顎骨壊死の改善に寄与するかもしれません。その他、積極的にIMRTを用いて、下顎骨の線量を閾値以下に設定し、下顎骨への線量を低減する事が顎骨壊死の予防に寄与することが期待できます。

Q.
OPERAグループのご報告ありがとうございます。 コメントです。今回のご報告の中に、皮弁と、ありましたが、舌(亜)全摘術後の再建には、通常、high volumeの筋皮弁を用い、隆起性の舌を、再建すると、思いますが、いかがでしょうか?

A.
回答:ご指摘の通り多くの施設でhigh volumeの筋皮弁を用いて隆起型の舌再建を行っていると考えられます。しかし、今回の調査では再建手術時の舌の形態評価を行っていない事、舌半切程度の再建が約60%含まれていることから、正確なデータをお示しすることが出来ませんでした。今後の検討課題にさせて頂きます。

Q.
質問です。 ご発表のOPERAグループでは、舌(亜)全摘術に、喉頭挙上術など、嚥下機能改善術を、いつも、追加されていますか?

A.
回答:再建手術時の嚥下改善手術の追加の有無については「いつも」行われている訳ではないと考えます。これらの調査項目で記載無しの症例が比較的多かったためスライドにデータは出しませんでした。喉頭挙上や固定の有無については「あり」130例、輪状咽頭筋切除または切開「あり」32例という調査結果でした。

Q.
1。癌不均一性を述べられています。組織切片1枚で、腫瘍(患者さん)の全体を評価するには、大きなリスクがあると、思いますが、いかがでしょうか?もしも、均一なら、任意の1枚で、評価は、可能ですね。2。 Keynote-048のお話が、ありました。先生の方法で、CPSは、評価できますか?例えば、CPS20以上とかCPS1以上は、評価可能ですか?3。組織の TMB(腫瘍遺伝子変異量)は、わかりますか?4。最近、血液のバイオマーカーが、注目されていますね。

A.
1. 癌には不均一性がありますので、任意の1枚で切片を選択するわけではありません。私達の研究では病理医からのアドバイスも得てviableで腫瘍の代表的な部位をふくむ、多くは最大割面を用いて解析しています。様々な新規イメージング手法がありますが、費用や技術的限界により解析領域が限られることが多い一方、多重免疫染色は切片全体を解析することができますので、選択した割面における腫瘍全体の不均一性にアプローチすることが可能です。さらに、この割面内のどこを詳細に解析するかという課題にも免疫細胞のhot spotをマッピングする手法で取り組み、こうした解析から得られた免疫特性と予後や再発期間との相関が実際に明らかとなってきていますので、腫瘍全体の特徴を捉える戦略に一定の前進が得られていると考えています。もちろんXY方向で腫瘍全体を捉えても、Z方向については捉えられませんので、臓器レベルで解析していく試みも今後重要となると考えています。

Q.
1。癌不均一性を述べられています。組織切片1枚で、腫瘍(患者さん)の全体を評価するには、大きなリスクがあると、思いますが、いかがでしょうか?もしも、均一なら、任意の1枚で、評価は、可能ですね。2。 Keynote-048のお話が、ありました。先生の方法で、CPSは、評価できますか?例えば、CPS20以上とかCPS1以上は、評価可能ですか?3。組織の TMB(腫瘍遺伝子変異量)は、わかりますか?4。最近、血液のバイオマーカーが、注目されていますね。

A.
2. 多重免疫染色を用いることで、癌細胞、リンパ球・マクロファージのそれぞれのPD-L1発現率が定量化できますので、近似的にCPSを求めることが可能です。一方で、染色の陽性・判定については病理学的見地からの判定を要し、それぞれの細胞種の同定マーカーによる分母の変化も予想されますので、本研究のデジタル解析で得た近似的なCPSとKEYNOTE-048の根拠となったスコアリングとの直接の対比は困難と思われます。
 病理検体は多くの臨床医にとってアクセスしやすい貴重な情報です。今回のCPSを一例に、組織を解析し、臨床情報と対比する努力を続けることで、今後、組織からの情報を活用して治療効果や予後予測につながるバイオマーカーを発展させることが期待されます。
3-4. 私達の手法ではTMBや血清から得られる情報を直接調べることはできません。こうした他の手法から得られる情報との相関は興味深い研究対象となりますし、さらには、それらと本手法で判明した組織の免疫特性を組み合わせることで、より精度の高いバイオマーカーができる可能性があると考えています。

Q.
1。real worldでの使用経験について、国内23施設の多施設共同研究(花井信広、本間明宏、他)で、256例が対象の報告があります。この集計結果、持ってられますか?

A.
この集計結果は持っておりません。

Q.
2。放射線療法併用で、良好な結果でした。実際に、照射野外の転移巣が、消えた症例(abscopal効果)は、何例、ありましたか?

A.
ここの具体例を集計しておりませんので、何例のabscopal効果があったのかはわからないです。

Q.
現在、進行中のいくつかの免疫療法を、教えて頂き、ありがとうございます。本日、教えていただいた進行中の治験の中で、どの治療が、一番有力でしょうか?

A.
ご質問ありがとうございます。
局所進行、再発転移に関わらず様々な臨床試験が行われていますが、その中でも現在進行中であるLEAP-010試験(Levatinib+Pembrolizumab)が前臨床試験および多くの報告から期待が持てるのではないかと考えています。
頭頸部癌コホートに限らず、複数癌腫において良好な結果(固形がん:KEYNOTE-146試験、切除不能肝細胞がん:KEYNOTE-524試験、転移性淡明細胞型腎細胞がん:KEYNOTE-146試験など)が報告されています。

Q.
注意すべき、多くのirAEの症例提示をして頂き、ありがとうございます。また、全科横断的な組織も、活発に運用されています。では、患者さんや家族の方々には、どのような説明、教育をされておられるでしょうか?教えていただければと思います。

A.
ご質問頂きありがとうございます。当院では患者教育に特別な事は行っておらず、企業が作成したパンフレット等を活用しながら説明しております。
irAEは多岐にわたり医療者に説明するのも難しいことから全てを患者さんに説明するのは不可能でありまた時間の浪費と考えております。
そのためシンプルに、発熱時、酷い下痢時、呼吸困難時、その他異常を感じたら病院に連絡して頂く様に説明しております。

コメント
素晴らしいご報告をいただき、ありがとうございます。ご発表の宿主免疫側のバイオマーカーのうち、PGC-1αについては、ベザフィブラート投与で、これを、活性化すると、PD-1抗体の抗腫瘍効果を増強することも、報告されています(PNAS)。是非、ご一緒に、臨床治験をさせていただきたいと思っています。

Q.
多くの進行中の治験を、教えて頂きありがとうございます。バイオマーカーについて、どのような患者んに、高率に、Abscopal効果が、生じるのでしょうか?茶本先生が、述べられたような宿主側についての検討は、いかがでしょうか?

A.
ご質問ありがとうございます。個々の宿主側のバイオマーカー検索も、付随研究としていくつか検討されているようです。生検中組織のリンパ球を含めたPD-L1のCPSなどはすでに頭頸部癌でも使用されているバイオマーカーです。癌腫によって、TPSかCPSを使用するべきかが異なるようで、腫瘍微小環境を検討する、という点ではこのバイオマーカーが免疫療法の予測では主流となっています。アブスコパル効果については、血液中のCD8陽性細胞の比率をフローサイトメトリーで検討したり、血中の可溶性PD-L1やPD-1を検討する研究も、付随研究で行われているようです。血液中のDAMPsの濃度の変化を治療前後で比較する研究なども報告があります。いずれにせよ、現状では決定的なバイオマーカーはなく、企業をはじめ世界中でその妥当性の検討が行われているのが現状のようです。Galluzzi et al. The hallmarks of successful anticancer immunotherapy. Science Translational Medicine 2018.がとても参考になると思いますので、ご一読ください。よろしくお願いいたします。

Q.
老化による発癌メカニズム、アセトアルデヒドによる食道がんの発癌メカニズムなど、最先端の研究成果を、教えていただき、ありがとうございます。 ご講演の前半の図には、喫煙も、入っていました。今回の食道癌の発癌メカニズムは、喫煙によっても、増強されるのでしょうか? 先生が、作られたクリニカルバイオリソースセンターには、頭頸部癌の患者さんの資料は、どのくらいお持ちですか?

A.
喫煙でもリスクが増強されます。
クリニカルバイオリソースにも頭頸部癌症例は登録されていますが、詳細は個別にお問い合わせください。

Q.
貴重なご講演、ありがとうございます。耳鼻科医です。 ご講演でもありましたが、耳鼻科で、発見される症例は、非常に少ないのが、現状です。そこで、下部消化管で行われているような、AI診断ができて、耳鼻科でも、使えるような新しい内視鏡を、作りたいと、思っていますが、いかがでしょうか?

A.
ご質問ありがとうございます。
咽頭表在癌のAI診断につきましては、国立がん研究センター東病院を中心に、すでに取り組みが開始されており、論文も報告されています。
文献は以下のとおりです。
Artificial intelligence system for detecting superficial laryngopharyngeal cancer with high efficiency of deep learning. Inaba A, Hori K, Yoda Y, Ikematsu H, Takano H, Matsuzaki H, Watanabe Y, Takeshita N, Tomioka T, Ishii G, Fujii S, Hayashi R, Yano T. Head Neck, 2020, 42(9):2581-2592.
この論文のAI診断は消化器拡大内視鏡を用いて開発されています。
今後は耳鼻咽喉科の内視鏡を用いたAI診断も開発されていくことが予想されますので、ご指摘の件は、素晴らしい試みであると思います。

Q.
綺麗な手術ビデオ見せていただき、ありがとうございます。1。表在癌の発見の経緯ですが、内科で発見されて紹介された症例と、耳鼻科で発見した症例は、それぞれ、どのくらいの割合でしょうか?2。耳鼻科で、発見するコツは?3。手術症例で、術後3週後から、経口摂取を開始された症例が、ありました。食道表在癌に対して、使われる粘膜再生シートを、貼るなど、何かで、術傷を、カバーすると、少しは、早く、経口摂取できますか?

A.
1.表在癌の発見の経緯ですが、内科で発見されて紹介された症例と、耳鼻科で発見した症例は、それぞれ、どのくらいの割合でしょうか。
→残念ながら消化器内科で発見され紹介された症例が多く、耳鼻科で発見された症例は全体の20~25%位です。しかし以前に比べると耳鼻科で発見される機会も増加してきていると思います。

2.耳鼻科で、発見するコツは?
→咽喉頭の違和感を訴えて来院される患者さんはすべてmodified Killian頭位でバルサルバと頸部捻転をして下咽頭深部まで観察する手技を習慣付ける事でしょうか。アルコール摂取でFlushingがある、或いはアルコール多飲者、食道癌の既往などのリスク因子のある方は特に注意して観察する事が必要です。また、白色光で赤色変化やメラノーシスを認める時はその部分或いは近傍に表在癌がある可能性があるのでこれらの変化に注意する事、NBIで観察する際は粘膜に近接して観察する事、口腔底や軟口蓋・口蓋弓などの表在癌は口からも内視鏡で観察しないと見逃してしまうので経鼻的のみでなく経口的にも観察する事、舌根部分は経鼻的観察時に舌を突出させて発声させてスコープの先端を手前に大きく彎曲して観察する事、などが重要なポイントだと思います。

3.手術症例で、術後3週後から、経口摂取を開始された症例が、ありました。食道表在癌に対して、使われる粘膜再生シートを、貼るなど、何かで、術傷を、カバーすると、少しは、早く、経口摂取できますか?
→個人的には、PGAシートは創傷治癒を早めたり、瘢痕化を抑制する事に対しては、あまり寄与しないと考えており、使用していません。我々の施設では金曜日にELPSを施行する事が殆どで、通常は手術翌週の月曜日に嚥下の状態をチェックしてから経口摂取を再開する様にしています。筋層を大きく切除した症例や広汎な切除症例では、経口摂取再開まで時間を要する事がありますが例外的です。

Q.
確認させて下さい。 舌癌のUSの測定方法ですが、動画では、舌可動部分を、前方に、牽引して、測定している様に、見受けました。実際は、口腔内探触子を使った口腔内での測定と思いますが、いかがでしょうか?MRIとの比較ですから。

A.
舌尖を保持しないと、プローブを当てると腫瘍が舌根方向に偏位して最大割面が描出しにくくなりますので、舌尖をガーゼで保持しております。
よってDOIの測定条件は全く同じというわけではありません。
しかしながら、舌プローブを押し当ててMRIと同一撮影条件下(舌安静位)に計測することもまた困難でないかと思われます。
ご不明な点がありましたらご連絡いただきますようお願い申し上げます。

Q.
簡潔に、分かりやすく、解説して頂き、ありがとうございます。耳鼻科医です。 質問は、中咽頭癌の項で、F-MISO或いは、HIF-!を使って、腫瘍の低酸素領域を測定し、投与線量を変えるという治療(Memorial Sloan Kettering)方法についてです。腫瘍の低酸素領域は、昔からある温熱療法を、加えると、酸素化するのではないでしょうか?すなわち、温熱療法を、併用すると、線量を下げることが、可能ではないでしょうか?

A.
ご質問ありがとうございます。
ご指摘の通り、温熱療法には放射線療法、化学療法の増感作用や免疫賦活作用だけでなく低酸素領域の再酸素化作用を有することは明らかとなっています。機序としては高温による血流の増加(異常血管の正常化)、HIF-1、VEGF発現の抑制と言われており、放射線療法との相性がよいことはよく知られています1。
頭頸部腫瘍は体表に近いこともあり、技術的に腫瘍温度を高めやすいことも考えると放射線療法と温熱療法の併用は非常にリーズナブルではないかと考えられ、実際に放射線治療単独VS温熱療法併用放射線治療を比較したいくつかのPositive dataの報告も存在しております2。
しかしながら現時点では温熱療法はあくまで予後不良の進行頭頚部癌に対しての化学放射線療法への上乗せを期待して行われることが多く、線量低減目的で併用することを検証した報告は少ないと思われます。低酸素領域の存在=放射線抵抗性腫瘍である以上は治療強度の低減は慎重になるべきと思われ、おっしゃるような温熱療法併用による線量低減はChallengingと考えます。今後遺伝子学的に治療感受性の層別化の研究が進み、低酸素の解除+線量低減放射線治療により根治が目指せるグループの解析が期待されます。
もう一点、本邦の現状として温熱療法のアクセスが容易ではないことも難点であります。温熱療法を併用するにあたっては照射および化学療法投与を可能な限り同時に行う必要があり、温熱療法と放射線療法の双方を受けることができる施設が限られているという要素が、温熱療法の普及を困難なものとしている一因となっています。

1. Gao S, Zheng M, Ren X, Tang Y, Liang X. Local hyperthermia in head and neck cancer: mechanism, application and advance. Oncotarget. 2016;7(35):57367-57378. doi:10.18632/oncotarget.10350
2. Datta NR, Rogers S, Ordóñez SG, Puric E, Bodis S. Hyperthermia and radiotherapy in the management of head and neck cancers: A systematic review and meta-analysis. Int J Hyperthermia. 2016;32(1):31-40. doi:10.3109/02656736.2015.1099746

Q.
LDRを、挿入するビデオ、ありがとうございます。耳鼻科医です。 1。治療計画(あるいは、3Dの線量分布)は、作成されるのでしょうか? 

A.
ご質問ありがとうございます。
・治療前の計画はPaterson-Parker法(古典的な計算方法です)に従い線源配置を行い、照射範囲(面積)と線源個数と線源強度より照射線量を手計算で行っています。
・線源挿入後にレントゲン写真より専用のPCを用いて3次元的に線量分布図を描き、標的範囲に十分な線量が照射されているかを確認しています。
しかし、レントゲン写真ですので腫瘍と線量との関係が一目瞭然にわかるわけではありません。線源の位置から腫瘍の位置を推測し評価します。
・外部照射のように前もって3次元的に線量分布を作成することは行っていません。

Q.
2。線源の日々の管理、あるいは、廃棄は、相当、厳しいのではないかと思いますが、いかがでしょうか?

A.
ご質問ありがとうございます。
・線源庫を所有していれば日々の管理に困ることはありません。
・廃棄に関しましては、連絡すればアイソトープ協会が引き取りに来てくれますので、問題になることはありません。
・慣れもあるかもしれませんが、環境が整っていれば管理等で困ることは特にありません。

Q.
耳鼻科医です。 線源を、挿入後、入院となりますか?もし、入院なら、何日くらいでしょうか?普通の病棟でも、問題ないでしょうか?

A.
ご質問いただき、本当にありがとうございます。高線量率組織内照射についてですが、舌癌の場合は入院が必要です(頬粘膜や口唇の場合は、せん妄の恐れなどで入院不可能な場合は局麻で日帰り・週1回ずつ・5週間でやったりもしています)。理由は、①疼痛対策で全麻下でのアプリケータ刺入が好ましいこと、②せっかく刺入したら週1回ずつ抜き差しするのは大変であること、③それで1回刺入5-7日照射にすると留置期間中の疼痛コントロールが必要になること、④口唇・頬粘膜と異なり留置期間中の嚥下・発語が困難になること、⑤留置期間中に誤嚥のリスクがあること、などです。

Q.
1。術後のUSの応用ですが、何か起こる前に、先に先に、手をうつことには、大賛成です。以前、遊離筋皮弁など、血管吻合後の、血流の確認にも、使われたことが、ありました。質問は、US検査の際に、術後創部の清潔は、どのように、維持されて、いますか?

A.
回答:術後創部の清潔について
術後2日目(または48時間)までは、皮切上はフィルムドレッシングの上から滅菌のエコーパッドをプローベに付けて検査をしています。それ以降は通常と同様に対応しています。

Q.
1。癌不均一性を述べられています。任意の組織切片1枚で、腫瘍(患者さん)の全体を評価するには、大きなリスクがあると、思いますが、いかがでしょうか?もしも、均一なら、任意の1枚で、評価は、可能ですね。2。過去の膨大な文献を参照されていますが、新しいバイオマーカーは、わかりますか?例えば、CPSとか、TMBは、いかがですか?3。血液のバイオマーカーが、最近、注目されていますね。

A.
1. 癌には不均一性がありますので、任意の1枚で切片を選択するわけではありません。私達の研究では病理医からのアドバイスも得てviableで腫瘍の代表的な部位をふくむ、多くは最大割面を用いて解析しています。様々な新規イメージング手法がありますが、費用や技術的限界により解析領域が限られることが多い一方、多重免疫染色は切片全体を解析することができますので、選択した割面における腫瘍全体の不均一性にアプローチすることが可能です。さらに、この割面内のどこを詳細に解析するかという課題にも免疫細胞のhot spotをマッピングする手法で取り組み、こうした解析から得られた免疫特性と予後や再発期間との相関が実際に明らかとなってきていますので、腫瘍全体の特徴を捉える戦略に一定の前進が得られていると考えています。もちろんXY方向で腫瘍全体を捉えても、Z方向については捉えられませんので、臓器レベルで解析していく試みも今後重要となると考えています。
2-3. 私達の手法は免疫染色をベースにしておりメタ解析も免疫染色を行ったバイオマーカーのみを対象とし、TMBやCPSに関しては含めておりません。しかし、それらの試みや血液から得られた情報と本手法で判明した組織の免疫特性を組み合わせることで、より精度の高いバイオマーカーができる可能性があると考えています。

Q.
1。摘出標本に、メジャーが併記されていないので、距離が、明確にわからないのですが、蛍光の有無(境界)は、mmの単位で正確に、分かるものでしょうか?

A.
ご質問ありがとうございます。蛍光の境界については、5mm厚でスライスした標本であれば、mm単位のレベルで腫瘍との距離を測定することが可能で、mm単位の断端評価が可能です。ただ、5mm厚でスライスした標本においても、その標本の厚みの分だけ蛍光色素が周囲に散乱しますので、腫瘍の断端から数mmのところまでは腫瘍からの散乱した蛍光が観察されます。(それでも5mm以内の散乱距離と言われています。)
さらに細かい顕微鏡レベルでの薄切標本(4µm)を解析すると、100µm単位のレベルで蛍光強度の測定が可能になります。実際に蛍光顕微鏡にて腫瘍本体や転移リンパ節を観察すると、腫瘍の部分に一致して蛍光色素が確認することができ、抗体が腫瘍において不均一に分布しているのがわかります。そのため、この蛍光イメージングの技術を用いると、手術の際の正確な断端評価のみならず、抗体の腫瘍への分布様式をより詳細に把握することが可能となり、抗体医薬への応用が期待できます。

Q.
2。今、注目のIR Dyeですが、確か、IR Dye700DXは、楽天メディカル小林久隆先生の光免疫療法で、使われているものですかね?

A.
ご質問ありがとうございます。その通りです、NIHに在籍されている小林久隆先生の光免疫療法と同じ種類の抗体を用いております。小林先生のグループは抗EGFR抗体にIRDye700DXを結合させて、そこに近赤外光を当てて治療を行う手法です。我々のグループは、抗EGFR抗体にIRDye800CWを結合させて、手術の際のより正確な切除を行う手法です。個人的には、近赤外光を用いた、内科的治療(光免疫療法)と外科的治療(蛍光ガイド手術)と考えております。
蛍光色素の波長の違いなど課題は多いですが、これらの技術が近いうちに合わさっていくことを期待しております。

Q.
3。手術直後、閉創前に、摘出標本の切除断端の評価が、手術室で、病理と同等の正確さで、分かる様に、なれば、素晴らしいですね。断端陽性なら、その場で、追加切除すれば良いわけですから。もっとも、一塊切除でなくて、分割切除には、なりますが。

A.
ご質問ありがとうございます。切除断端の評価は外科医にとって永遠の課題だと思っております。この技術を用いると、実際に断端評価が手術室内にてすぐ行うことができるのが大きなメリットです。実際に、米国での臨床試験でも、切除後に残存腫瘍の同定が可能になった症例や、腫瘍から少し離れた別の重複癌を同定できた症例もありました、ただ、やはり現在の医療現場においては、術中迅速診断において病理医が評価し、腫瘍の有無を確認することが重要と思います。今回の蛍光イメージングを用いたセンチネルマージンの概念は、どこから術中迅速診断のための標本を採取するかの、手助けになればいいと考えております。ただ、やはり視診や触診ではわからないような神経浸潤などは蛍光イメージングでも見逃す可能性が十分ありますので、個人的には頭頸部癌の切除においては、完全切除のためには一塊切除が今後も重要かと思っております。

Q.
ご報告ありがとうございます。積極的な治療をなされている新橋先生に質問です。どのような症例に対して、端端吻合を行い、どのような症例に気管開窓手術を行っているのでしょうか?気管周囲の半分以上の浸潤があると端端にしているなど具体的なおおよその取り決めはございますでしょうか?また端端縫合を行った場合、①どのくらいの期間全身麻酔管理にするのか、②頸部伸展しないようにする工夫、③今まで大きなトラブルの経験、などございましたら、教えていただきたいです。よろしくお願いいたします。

A.
ご質問ありがとうございました。
Q: どのような症例に対して、端端吻合を行い、どのような症例に気管開窓手術を行っているのでしょうか?
A: このような気管切除の場合には端々吻合というような明確な基準はございません。端々吻合が可能と判断した症例には実施していくという感じですが、反回神経麻痺の有無や、特に他臓器浸潤の程度、頸部転移の状況によるところが大きいと思います。つまり気管以外の他臓器切除が大きくなれば切除後の死腔が大きくなり、特に大血管の被覆を最優先すべきと考え皮膚瘻形成を選択する場合が増えると思います。

Q:また端端縫合を行った場合、
1. どのくらいの期間全身麻酔管理にするのか、→ 通常は術後抜管して管理しています。 
2. 頸部伸展しないようにする工夫、 → 術後の工夫は特に目立ったことはしておらず、術中に気管尾側を十分に剥離して縫合部に緊張がかからないようにしております。

Q:今まで大きなトラブルの経験、
A: 今回の対象症例には入っていませんが、1990年代始めに 気管シェービングし、その部位が後から感染し、気管皮膚ろうとしたが周囲感染が改善せず頸動脈破綻という経過はありましたので、
端々吻合でも気管皮膚ろうでも、やはり頸動脈周囲に感染が及ばないように十分配慮することはとても重要であると考えています。

Q.
大変興味深く拝見させていただきました。今回予後予測として治療前のQOLにフォーカスをあて、痛みが予後予測因子として提言されていますが、QOL-H&N35あるいは45などは同時に行われているのでしょうか。また治療前後でスコアの差を元に検討などはされたのでしょうか。ご教示いただけますと幸甚です。

A.
ご質問ありがとうございます。H&N35に関しては同時にデータ収集は行ておりますが、時間的な制約で、そこまでは解析できておりません。また、スコアの変化量についても、同様の理由からまだ解析出来ておらす、今後、ご指摘頂いた点についても解析を進めていきたいと存じます。

Q.
頭頸部癌の早期発見に果たす喀痰細胞診の重要性について認識できました。初回検診にてclass Ⅳb以上で偽陽性の症例が4件ありますが、この結果はどのように解釈されるのでしょうか?検体のコンディションなどの影響ですか? また再検鏡にて診断が下方修正されたケースもあるのでしょうか?

A.
ご清聴並びに、ご質問ありがとうございます。
確認しましたところ、4例とも扁平上皮癌が疑われ紹介となった症例でした。
うち2例は精検目的の初回受診時以降、複数回の喀痰細胞診検査でいずれもClass2以下となりフォロー終了となっておりましたため、再現性がないことから、ご指摘の通り初回検査時の検体処理の問題であった可能性は否定できません。
1例は、CT検査にて肺野の異常を指摘された後、他院での精査を希望されたため転帰が追えない症例でしたが、当発表以後確認しましたところ、他院で肺癌の診断に至り手術治療を施されていたことが判明致しました。
1例は喫煙歴のある男性で、再検査でClass3bとなるも病変特定に至らず、呼吸器外科および耳鼻科でフォローアップを継続しておりましたが、Class3bが連続して続きました。途中で禁煙をはじめたところ、その直後から喀痰細胞診の結果でClass2以下が続き、フォロー終了となったようでした。何らか喫煙習慣と上皮の異型との関連性が伺える経過となっておりました。
文献的にはClass4以上の症例は高率に癌の診断に至るとされており、今回の当報告では偽陽性率がやや高くでている可能性がございます。貴重なご指摘・ご質問いただき誠にありがとうございました。

Q.
1. 「その他の因子と気管傍転移」の食道浸潤の診断規準を教えてください。術後病理でしょうか。それとも術前のCTやGSでしょうか。術後病理で食道浸潤と両側VI転移が関連するのは理解出来ます。病理学的食道浸潤有無を正確に術前診断出来るの方法を探しています。2. 「Nstageと気管傍転移」「その他の因子と気管傍転移」のPS原発に限ったデータを教えてください。「Nstageと気管傍転移」でPS原発でもN2cで両側VI転移が多いのか確認したいです。(恐らくそうだと思いますが)「その他の因子と気管傍転移」で食道浸潤が両側VI転移に有意に相関するとのことですが、食道浸潤例はPC原発が多いという交絡によるものかどうかを確認したいです。3. 「Nstageと気管傍転移」の結果をもって「N2b以上は両側VI郭清が必要」は少し言い過ぎではないでしょうか。N2b以上に健側VI転移が多いのは了解しました。また、N2cに両側VI転移が多いのも了解しました。ですが、これをもって「N2b以上」で両側VI隔世が必要というのはやや言い過ぎな印象を持ちました。例えばc-N2bの両側VI転移は1.8%でc-N1の6.3%より少ないですよね。N1の症例数が少ないので統計学的な比較は出来ませんが...4. 「pN分類別のOS」をpNb以上(未満)と術後RT有無で4つに層別化するとOSはどうなりますでしょうか。pN2b以上がpN2b未満に比して有意に予後不良であるのは当然と思います。有意に予後不良な症例には積極的に術後照射をすべきだと思います。pN2bや脈管侵襲やpT3-4のintermediate-riskにRT単独(ENE+のようなCRTではなく)をする根拠も、これらrisk因子を有している症例は有意に予後不良だからRTを行うという論旨だったと思います。3. と4. はご施設の方針によるものもおありかと存じます。可能な範囲でお返事お願いします。

A.
1. 「その他の因子と気管傍転移」の食道浸潤の診断規準を教えてくてください。術後病理でしょうか。それとも術前のCTやGSでしょうか。
術後病理で食道浸潤と両側VI転移が関連するのは理解出来ます。病理学的食道浸潤有無を正確に術前診断出来るの方法を探しています。

回答:
術後病理診断で判断しています。

2. 「Nstageと気管傍転移」「その他の因子と気管傍転移」のPS原発に限ったデータを教えてください。「Nstageと気管傍転移」でPS原発でもN2cで両側VI転移が多いのか確認したいです。(恐らくそうだと思いますが)「その他の因子と気管傍転移」で食道浸潤が両側VI転移に有意に相関するとのことですが、食道浸潤例はPC原発が多いという交絡によるものかどうかを確認したいです。

回答:
今回の研究はPS癌のみの集計ではございません。次回に改めて検討いたします。

3. 「Nstageと気管傍転移」の結果をもって「N2b以上は両側VI郭清が必要」は少し言い過ぎではないでしょうか。N2b以上に健側VI転移が多いのは了解しました。また、N2cに両側VI転移が多いのも了解しました。ですが、これをもって「N2b以上」で両側VI隔世が必要というのはやや言い過ぎな印象を持ちました。例えばc-N2bの両側VI転移は1.8%でc-N1の6.3%より少ないですよね。N1の症例数が少ないので統計学的な比較は出来ませんが...

回答:
cN1の両側転移6.3%は注釈にあるように、結果的にはpN2bをclinicalに過小評価したものです。Clinical N stageですと診断にばらつきを生じますので、解析にはpathological N stageの方を重視しました。PathologicalにはpN0,pN1,pN2aまでは気管傍転移0%である一方で、pN2bになると気管傍転移が出現し、そのうち両側転移は、対象症例全体の中では2.4%ですが、pN2b気管傍転移例の10%にあたります。2.4%(10%)をどのように考えるかですが、スライドで示したように、これを術前の画像診断で発見することは困難で、もとよりpN2b以上は予後不良になりますので、治療強度を下げることには慎重になっております。残念ながら両側郭清を行っても2.4%の気管傍再発があったのですが、予防的郭清により2.4%の潜在健側気管傍転移を郭清出来ていたことも事実です。とりわけ予後不良のN2b例において、「TPLも辞さない」という患者に対して、短時間でできる両側気管傍郭清の半分を省略して、潜在健側気管傍転移を取り残すべきではない、というのが結語の主旨です。

4. 「pN分類別のOS」をpNb以上(未満)と術後RT有無で4つに層別化するとOSはどうなりますでしょうか。pN2b以上がpN2b未満に比して有意に予後不良であるのは当然と思います。有意に予後不良な症例には積極的に術後照射をすべきだと思います。pN2bや脈管侵襲やpT3-4のintermediate-riskにRT単独(ENE+のようなCRTではなく)をする根拠も、これらrisk因子を有している症例は有意に予後不良だからRTを行うという論旨だったと思います。

回答:
ご提案ありがとうございます。
本研究は術後RTについて検討したものではございません。また、当科では中間リスクに対する術後単独RTを系統的には行っておりません。

Q.
大変興味深い報告です。CDDP2コース目の値と予後との差が明らかですが、その差はほかの化学療法でもあるでしょうか。

A.
ご質問頂き、ありがとうございます。
CDDPおよびCBDCAを含むレジメンにおいて治療前後のAlb、TPの変化を検討した報告はあり、白金製剤を含むレジメンが栄養状態の悪化に関わることが示唆されています。(対象:頭頸部癌に限らず消化器系・婦人科系・呼吸器系・泌尿器系・血液系を含んでいます)
他のレジメンにおいて化学療法期間中のプレアルブミンの推移についての報告はありませんでしたが、抗がん剤の種類による栄養状態への影響は考慮が必要であり、治療期間中プレアルブミン値の低下が他のレジメンでも再発予後との関連因子となるかについては不明です。

Q.
座長の橋川(神戸大学形成外科)です。入念な準備と丁寧な手技による素晴らしい結果に感服いたしました。一つ教えて欲しいことがあります。この症例では、筋突起切除によって残存骨片の可動性を上げたとのことですが、放射線照射後の症例などでは、関節突起自体の可動性がほとんどないこともあると思います。このような場合、私はやむなく移植骨と外側(遠心)骨片を固定せずに再建することがあります。この点について、先生の御経験から何か良い方法があれば御教授ください。

A.
橋川和信先生

いつもお世話になっております。ご質問いただきありがとうございます。

RTにより関節の可動性が低下している症例での骨再建という内容でしたが、ORNによる下顎切除および再建症例でしょうか。
術前は開口障害が強く、ほとんど開口し得ない状態と拝察いたします。
開口できること、咬合や咀嚼機能の回復が重要になると思われますので、整容性はさらに移植組織に余裕があれば目指すところとなるかもしれません。

ORN症例であれば、ご存知のように開口障害の原因としてTMJ周囲の骨が骨髄炎に罹患しているのか、頬部皮膚や粘膜などの軟組織が照射による線維化で拘縮しているのかが考えられると思います。
・関節突起の骨自体に問題があればこれも切除し、TMJを含めた骨再建を考慮します。
残すことができる関節突起が小さく、十分な固定ができないようであれば、質問いただきましたように固定せずに再建(顎関節強直症のgap形成術の様に偽関節を形成)することを選択すると愚考します。
・頬部皮膚や頬粘膜など軟組織の拘縮であれば、これを切除し、移植床が形成できそうであれば皮弁に置き換え、開口できるようにします。

適切な回答とは言えませんがご容赦くださいませ。
今回は、ご質問いただき、誠にありがとうございました。

Q.
座長の橋川(神戸大学形成外科)です。大変貴重な御報告をありがとうございました。一つ教えて欲しいことがあるのですが、よろしいでしょうか。私自身は、多くの場合でセッティングが容易なことから、内頸静脈への吻合を好んでいます。しかし、自験例では内頸静脈と外頸静脈で血栓形成率に有意差がなく(内頸静脈ではほとんどが内頸静脈血栓症です)、血栓形成に関しては優劣がないと感じています。このことを踏まえると、外頸静脈への吻合後に全身ヘパリン化すれば、術後血腫などによる別のトラブルが懸念されます。この点について、先生のお考えを御教授ください。

A.
橋川和信先生
ご質問ありがとうございます。
当院でも可能であればできるだけ内頸静脈への吻合を行うことにしており、外頸静脈に吻合するのは、根本的頸部郭清で内頸静脈が切除された症例になります。
自験例で内頸静脈と外頸静脈で血栓形成率に有意差があるかというと、きちんと調べたことがないので分かりません。ただ、外頸静脈の吻合については当科同門の先輩方に外頸静脈に吻合すると血栓ができやすいから気を付けるようにとよく言われました。おそらく、外頸静脈は腫瘍切除の際に結紮されてしまうことが多く、長時間血液が流れない状態が続いて血栓ができやすかったり、枝の処理の際にくびれができるような結紮がされやすかったりしたのだと思います。このことを考慮に入れて、私自身が術者を任せられるようになってから(ここ6~7年間)は、根本的頸部郭清が行われる症例では、切除の際に根治性に支障がなければ外頸静脈を結紮せずに血液が流れる状態で腫瘍切除していただいたり、外頸静脈を巻き込まないように枝の処理をしていただいたりするようにお願いしています。また、皮弁の血管茎が長ければ、できるだけ腫瘍切除の際に露出していない中枢に近いところで外頸静脈と吻合することにしています。
外頸静脈と吻合する際には、このようなことに気を付けて行っていますが、今回の発表で症例10として提示した症例では外頸静脈と吻合し、術後血栓形成してしまいました。ねじれ、過伸展、圧迫、血腫などを避けるように、気を付けるべき事は気を付けていたつもりでしたので、原因は気づかないうちに外膜を巻き込んで吻合してしまったか、何か考えつかない理由で外頸静脈に血栓が起きてしまったかだと思いました。となると、今後このような血栓を起こさせないためには外膜を巻き込まないような吻合を心がけることの他にはヘパリン化するくらいしか対処が思い浮かびません。
ただ、このヘパリン化という意味合いはAPTTが延長するように管理をするというわけではなく、出血傾向にならない程度にヘパリンを投与してもよいのではないかということです。今までも、当院で下肢静脈血栓症が起こった症例が少し続いた時期には5000単位/日程度のヘパリンを術後に持続投与して管理した事がありますが、外頸静脈につないだ時にはその程度の量を投与してもよいのではないかということです。
橋川先生からご指摘いただいた全身ヘパリン化すれば術後血腫などによるトラブルが懸念されるという点は、その通りだと思います。ですので、やるとすればAPTTが正常範囲内におさまる程度のヘパリン化を行っても良いのではないかということです。
症例10の後、当科で血管トラブルが起こった症例は無く、外頸静脈につないだ症例もありません。そのため、外頸静脈に吻合して術後ヘパリン投与をした症例はまだありません。今後外頸静脈につないだ際に少量のヘパリン投与をしてみるかもしれませんが、それが意味のあることなのかは簡単には結論は出ないように思われます。今後もできるだけ血管トラブルをはじめとして、他の合併症も起こさないようにどうするべきか考えながら治療に当たっていきたいと思います。
十分な回答になっているか分かりませんが、以上になります。ご質問ありがとうございました。今後ともご指導のほどよろしくお願いします。

Q.
座長の橋川(神戸大学形成外科)です。大変素晴らしい結果の御報告をありがとうございました。一つ教えて欲しいことがあるのですが、よろしいでしょうか。オトガイ下皮弁は比較的血行が良く、扱いやすい皮弁であることに異論はありません。欠点は、先生も指摘されている頚部郭清後には使用困難であることに加えて、オトガイ下の形状が原因で採取部に死腔を生じやすいことだと思います。この点を考えると、頸部郭清がない症例なら広頸筋皮弁も有用な選択肢に挙がると思います。この点について、先生のお考えを御教授ください。

A.
橋川先生,ご質問ありがとうございました。
ご指摘の様に,広頸筋皮弁の方が,皮島部は下顎のアーチより離れており,ドナーサイトの死腔発生・縫合不全の可能性は低いと考えております。
また,より薄い皮弁の為,再建後の口内の形態も,術後早期から自然になるだろうと考えてます。顎下腺や顎二腹筋前腹も温存され,侵襲性もより低いと考えています。
以上広頸筋皮弁は有用な選択であると考えて,私も本症例の術前には複数の文献を参考にし,広頸筋皮弁の適応も検討しました。
今回,比較の中で最終的にオトガイ下皮弁を選択した理由は以下であります。
①広頸筋皮弁の部分壊死の頻度が文献的にオトガイ下皮弁よりは高いと考えられた点。本例は頸部の放射線治療後であり,血行にやや不安がありました。
②広頸筋より浅層での皮下剥離や,深部のdeep adipofascial layerを温存した剥離操作が,局所皮弁手術に慣れていない頭頸部外科の私にとって,ハードルが高いと感じられた点。
 対してオトガイ下皮弁は,頸部郭清や顎下腺摘出で扱い慣れた層,慣れた視野での剥離操作で完結する事。
③学術的ではありませんが,you tube上にオトガイ下皮弁を解説した海外の動画が多数あり,繰り返し見ることにより手術のイメージを持つことが出来た点。 

本年より当院にも形成外科が開設され,再建について形成外科医の協力を仰ぐことが出来る環境となりました。
現在の環境下で本症例に対応するとしたら,形成外科医のアドバイスを受け,広頸筋皮弁の方を行っていた可能性も十分にあります。

Q.
座長の橋川(神戸大学形成外科)です。大変興味深い御報告をありがとうございました。とくに術後CCRT例に生じた口腔皮膚瘻は難治化しやすく、今後再建外科医が取り組むべき課題だと思います。一つ教えて欲しいことがあるのですが、よろしいでしょうか。術後照射症例に瘻孔閉鎖術を行う場合、そのタイミングについては、どのようにお考えでしょうか。照射開始前に速やかに行うという考えもあるでしょうし、照射後しばらく待ってからという考えもあると思います。同時に化学療法が施行される場合は、それとの兼ね合いも問題になってきます。クリアカットな方針を示されるのは難しいかもしれませんが、先生の総合的なお考えだけでも御教授ください。

A.
ご質問賜り幸甚です。
舌・口底癌切除・再建例において、生じた口底部のし開や瘻孔閉鎖を行う時期は、放射線治療を控えている場合、なるべく照射前に行うことが理想と考えます。骨露出による骨髄炎や創傷治癒が遷延するリスクを高めると考えるからです。また化学療法を伴う場合は、同部を感染源として重篤化する可能性があり、照射開始前に創部が治癒していることが望ましいです。
しかし現実は、術後補助療法として放射線治療の開始時期を極端に遅らせることは、腫瘍制御を考えると難しいことが多いです。
さらに、放射線照射前に閉鎖処置を行い、瘻孔が閉じたと判断し放射線治療を行った場合も、放射線照射中もしくは終了後に瘻孔が再形成することがあります。また患者の心情も考慮すると、手術直後に全身麻酔下での瘻孔閉鎖手術を患者に提案するより、まずは局所麻酔での低侵襲な処置になりがちです。そのため、今回報告した自験例では、全身麻酔による積極的な瘻孔閉鎖術を行うタイミングは、放射線治療後しばらく待ってからの施行となっておりました。
以上、回答させていただきます。

Q.
有意義な試みだと思います。質問は、治療法選択、予後に影響し得る並存疾患、他癌の治療歴などは、G8、GNRIに直接影響を与える因子としてその数値に反映されていると考えたら良いのでしょうか。ご教示ください。

A.
ご質問ありがとうございました。
GNRIと他因子との評価は今回行っておりませんでしたが、追加で検討いたしました。
・治療法は細部であり評価が難しく、T stageで評価を行いました。GNRIが高い症例に若干ですがT1症例が多いものの、T4については同程度の頻度でした。
・GNRIの低下症例群は心疾患の既往が多い印象ですが、今後も検討が必要かと思います。
・他癌腫、頭頸部癌の既往はGNRIには影響しておりませんでした。

Q.
臨床検体におけるTie2IHCの検討において、①腫瘍組織内でのTie2陽性細胞分布の組織内heterogeneietyはどの程度であったか、すなわち臨床での生検検体で、腫瘍全体の傾向を予測することは可能ですか?

A.
①につきまして,生検検体においてTie2/Ang1の発現を評価することによって,腫瘍全体の傾向を予測するバイオマーカーの一つとなりうると考えられますが,腫瘍全体との相関やTie2/Ang1の相互作用についてはさらなる研究が必要となると考えますので,今後再度評価を行ってまいります.

Q.
②もし行っていれば、同一症例において局所腫瘍と頸部転移巣のIHCの染色性(スコア)には違いはなかったか、すなわちどちらからの検体でも、同症例の傾向を正確に予測な可能でしょうか?

A.
②につきましては,
今回,同一症例での頸部転移巣のIHCスコアによる評価を示しておりませんが,今回のように局所腫瘍におけるTie2/Ang1の発現と頸部リンパ節転移との相関関係,Tie2強制発現細胞株を用いた機能解析から腫瘍の傾向を予測するだけでなく,転移巣におけるTie2/Ang1の発現を評価することによって腫瘍の傾向を確認すべく今後さらなる研究を行ってまいります.

Q.
SASに対する低濃度抗癌薬暴露での上清中エクソソーム数は、5FUで変化なく、CDDPで減少しています。しかし共培養での実験で、5FUではHDFa細胞の細胞移動能が亢進し、CDDPでは変化がなかったとの結果が得られています。エクソソーム数に変化のなかったCCLDで細胞移動能を更新させるよう作用し、エクソソーム数が減少したCCLDで細胞移動能が変化しなかったとの結果と思いますが、少し理解しにくく感じます。この結果のメカニズムについてどのように考察しているかお伺いしたいと思います。

A.
私たちの発表に興味を持っていただき、また、ご質問していただきありがとうございます。
深く感謝申し上げます。

まずは前提となる他の情報も追記させていただきます。
がん細胞が周囲の細胞にもたらす影響については、液性因子の関与として、①乳酸やアミノ酸などの代謝物によるもの、②蛋白質やサイトカイン、③エクソソーム、④その他①~③以外のものが考えられると思います。

今回我々は、③のエクソソームについて検討を行いました。
今回発表したデータには含めていませんが、抗がん剤によるがん細胞から周囲に影響を与える物質として、培養上清に分泌されるHSP90が関与していることを同定しています。HSP90は、エクソソームに多く含まれることが報告されていることから、エクソソームについての検討を行った次第です。

まず、結果のメカニズムについての1つめの考察ですが、今回の結果には、上記①~④のメカニズムが関与している可能性があり、③エクソソームだけでは、すべてを説明しきれない可能性があります。そのため、結果と考察においては、「エクソソームが影響をもたらしている可能性がある」との表現にしております。

そのような前提のもと、ご質問の中心部分となるエクソソームが関与するメカニズムとしての考察について次に述べさせていただきます。

エクソソーム数とCCLDの細胞移動能について
ご質問の点についてですが、下記の点がポイントになるかと考えています。

A:エクソソーム数と細胞移動能は、関係があるか?
B:エクソソームの性質変化があり、それが細胞移動能と関係しているのか?

これまでの研究において、膵癌細胞とGemcitabineの検討において、Gemcitabineは、膵癌培養細胞からのエクソソーム数を2倍程度に増加させるという結果でした。5FUは、やや増加させる程度でした。

頭頚部領域で使用される薬剤である5FUとCDDPについても同様に解析をおこなってみようということが、研究の出発点です。

今回、SASにおいて、5FUでは、エクソソーム数にはあまり影響がなく、CDDPで減少したことは意外な結果でした。

ここで、上記Aのエクソソーム数と細胞移動能が相関すると考えた場合は、結果の説明がつかないことになります。

私たちは、(B)の「5FUにより、エクソソーム数は変わらないものの、表面マーカーの構成や、内包物が変化したことにより、細胞移動能を更新させるような変化がもたらされた」ことが理由と考えています。
もう1点、「CDDPでは、そのような細胞移動能更新をもたらせるような変化がもたらされていないか、もたらされたとしても、分泌されるエクソソーム数が減ったことにより、その効果が発揮されず、細胞移動能が更新しなかった」と考えています。

これが結果のメカニズムと考えていますが、それらを証明するデータは、まだ取得していないため、これらの推測を主張しませんでした。そのため、我々の発表において、内容を適切にお伝えできておらずにすみません。今回ご質問いただいたことで、もう少し推測していることを記載すべきであったと反省しております。

補足情報を少しお伝えさせていただきます。
フィルターの通過性能についてです。分量の制限があることから、今回フィルターの性能についてのデータは発表していませんが、下記の通りです。
0.6μm孔径 蛋白質とエクソソーム、ブドウ糖やアミノ酸などの代謝物は通過します。
0.03μm孔径 ブドウ糖やアミノ酸などの代謝物のみ通過し、ほとんどの蛋白質は通過しません。

スクラッチアッセイにおいて、0.03μmフィルターでは、隣の細胞の影響がみられなかったことから、これらは、主に液性因子としては、蛋白質あるいはエクソソームが影響を与えたと解釈しています。
エクソソームが単独の原因であるか否かについては不明ですが、エクソソームの性質変化が細胞移動能更新をもたらした一因であると考えています。これまでの解析において、抗がん剤では、細胞の代謝が低下するために、細胞上清に出てくる蛋白質も、分泌量はほとんど低下しています。その中でも、「細胞上清において増加した数少ない蛋白質」が熱ショック蛋白質でした。熱ショック蛋白質は、熱刺激だけでなく、細胞の緊急事態といるようなときに産生される蛋白質であり、通常は細胞内に多く含まれている蛋白質ですが、特定の条件では、細胞外に分泌あるいは、細胞表面に出ている部分の一部が切れて、細胞外に漏出してきます。特にHSP90は、蛋白質の修復機能を持つことが知られていますが、それ自体がダメージ伝搬シグナル(Damps)となって、他の細胞にシグナルを伝える役目を持ちます。
今回の現象を説明する液性因子としての蛋白質としては、少なくともHSP90などの熱ショック蛋白質は同定しています。HSP90はエクソソームにも含まれ、またエクソソーム表面にも発現しています。このような事実から、抗がん剤によりダメージを負った細胞からのエクソソームが、周囲の細胞に影響を与えるという仮説をもとに研究を行っています。
我々は、膵癌細胞を用いた研究にて、抗がん剤によりエクソソーム数が大きく変化することから、そのエクソソーム表面マーカー(CD9,CD63,CD81)などの割合について定量的な解析を行っています。その結果、エクソソーム数の変化と共に、表面マーカーの割合が大きく変化しました。内包物(蛋白質や核酸)の変化については、現在解析中ですが、表面マーカーの変化が大きかったことから、内包物も大きく変化していると予想しております。
これまでエクソソームの表面マーカーの変化については、あまり考慮されていないと思います。我々の解析では、エクソソームの構成は、薬剤により大きく変化するので、エクソソーム数だけでは、判断できないと思っています。
エクソソームは、その表面マーカーや内包物は、容易に大きく変化するのですが、そのような前提としてとらえられていません。いまだ、エクソソームの表面マーカーである、CD63などの定量結果をエクソソーム数の代替マーカーとしている発表も多く見られます。
そういったことから、今回5FUにおいて、エクソソーム数に大きく変化がなくても、その組成が変化したことにより周囲の細胞移動能が更新していると考えており、またCDDPにおいては、細胞移動能を更新させるような変化が起こらなかったか、あるいは起こったとしても、分泌機序に影響を与えて、その作用の発現が出なかったと考えた次第です。
これからの研究の結果、これらの解釈が大きく変化してしまう可能性はあるのですが、エクソソームに関してまだまだ基本的なことがわかっていません。特に、薬剤によるエクソソームの動態変化は、十分な解析が行われておらず、またコンセンサスも得られておりません。

我々の未熟な発表に際して、ご興味を持って、ご質問していただいたことに深く感謝申し上げます。引き続き研究を進めて、今回いただいたご質問に対して明確な回答ができるように努力していきたいと思います。ご質問ありがとうございました。

Q.
いつも鮮やかな手術で憧れています。手術時間に関してですが例えばN0でレベル2~4の郭清、皮切から閉創までとしたら先生はどれくらいの時間でされますか?また頭頸部がん専門医直前くらいの若手の先生であれば目標時間はどれくらいとお考えでしょうか?

A.
N0に対する郭清で「皮膚切開→郭清→閉創」という一連にはならないのでなかなか難しいですが
片側のレベル2-4の予防郭清であれば郭清に要する実質時間は20分ぐらいです
皮膚切開から皮弁挙上5-10分、閉創10分として全体で35-40分程度と見積もれます

皮膚切開、閉創を含めない郭清に要する実質時間として、若手の先生の場合の目標は45分程度(少なくとも1時間以内)と考えます
ご質問ありがとうございました

Q.
いつもながらの素晴らしい手術を見せていただきありがとうございます。 質問です。1。上村先生のご講演で、PET-CTを、考慮すると、ありました。おそらく、NEJM2016のMehannaの論文のことと、思いますが、先生は、PET-CTを考慮されますか?2。CRTの前に、頸部郭清を、先行して、行う時が、ありますか?

A.
1. CRT後の転移リンパ節の残存有無について、CRT後12 週以降に行われるPET-CT診断が感度、特異度ともに優れるとされています。PET-NECK study、Ongらの報告 (J Nucl Med. 2008)、NCCNガイドラインも同様です。よって大いに参考にしています。
2. 所謂、upfront neck dissectionですが、かつては考慮したこともありました。これはsmall T, large Nの症例が良い対象ですが、現在であればtransoral surgeryによって同時手術を試みます。transoral surgeryの進歩とともに、upfront NDの役目は少なくなったのではないかと考えています。

Q.
手術前に、入念な準備をされています。勉強になりました。質問です。1。PET-CTですが、確か、NEJM2016の記載のことと、思いますが、どの程度、考慮されますか?2。CRT前に、先行して、頸部郭清をされることは、ありますか?コメントです。 エネルギーディバイスを使用した際に、閉創前に、術創を生食で洗うことは、されますか?熱傷のfirst aidは、冷水で冷やすと、されています。詳細に、検討したことは、ありませんが、少しのことで、少しでも、患者さんの負担が減れば良いのではと思っていますが、いかがでしょうか?

A.
1. PET-CTですが、確か、NEJM2016の記載のことと、思いますが、どの程度、考慮されますか?

回答:CRT後に残存する頸部転移が疑われる場合に、現実的にはPET-CTをとることは保健収載の点から難しくなります。したがって、通常は大多数では造影CT,US下穿刺細胞診などを利用して診断・術前評価を行なっています。初回治療前での評価や初回治療後の長期でのフォロー中での再発評価においては遠隔転移や重複癌有無の評価にもながることもありますので、積極的に利用しています。

2. CRT前に、先行して、頸部郭清をされることは、ありますか?

回答:時として頸部郭清術をCRT前に先行することはあります。吉本先生が司会をされたパネルディスカッションでも、これに近い話が話題にあがっていました。制御困難と予測される頸部転移があって、原発巣はCRTで制御が十分に期待できるような場合が代表的な場面かと思われます。制御困難でCRT後に残存腫瘍があれば、術後の肩関節外転障害、舌下神経麻痺などの後遺障害を生じる危険性は高まることが予想されます。郭清を先行することで、照射範囲を最終的により絞ることができて、少しでも局所有害事象を軽減することに繋げて根治を狙える可能性も期待されます。ただし、かなりselectionをかけた患者様が対象となると考えています。

3. コメントです。 エネルギーディバイスを使用した際に、閉創前に、術創を生食で洗うことは、されますか?熱傷のfirst aidは、冷水で冷やすと、されています。詳細に、検討したことは、ありませんが、少しのことで、少しでも、患者さんの負担が減れば良いのではと思っていますが、いかがでしょうか?

回答:おっしゃる通りかと思います。ですので、不用意に広い範囲を長時間加熱して熱損傷を拡大することのないように注意は払わなくてはなりません。けれども、ハーモニック・フォーカス・プラスを使用する限りでは、クランプの先端から数mm以上離れて適切に使用していれば熱変性して不可逆的に変化する確率は高くはないようです。閉創前に洗浄することは行ってはいますが、冷却に拘って行うほどではないと考えています。それでも、術中に生食で十分に濡らしたガーゼを手元において、デバイス自体を冷却したり、少し加熱範囲が広かったと思われる組織を冷却したりすることは賢明な対策であろうと思います。このご質問を頂いた先生は、患者様に有害事象を残すリスクのみならず、助手に熱傷を追わせることを回避する点でも良いお考えをお持ちなのでしょう。

Q.
日本発の新規治療BNCTを、ご紹介いただき、ありがとうございます。耳鼻科医です。ご講演で、70代女性の外耳道癌の症例が、ありました。治療前の聴力は、維持できるでしょうか?

A.
中耳や内耳にまで腫瘍が浸潤したり、炎症の波及等の影響が生じている場合には、治療により聴力の低下を来すことがあると考えられます。
30 名の頭頸部癌患者に実施された原子炉を用いたBNCTの成績として、晩期有害事象としてGr1-2の聴力低下が2名の患者に認められたという報告があります。(Kankaanranta, Int J Radiat Oncol Biol Phys, 82(1):e67-75, 2012)

Q.
日本発の新規治療を、教えていただき、ありがとうございます。 切除不能な甲状腺未分化癌を、BNCTで、治療したいのですが、いかがでしょうか?ステボロニンは、2.5以上の集積が、ありますでしょうか?

A.
甲状腺未分化癌について.
保険適応が「頭頸部癌」ですので,書類上は問題無いと考えます.
ですので,一照射野内で治療可能な表面から7cm以内の病変であれば,治療適応を前提として対応させて頂きます.
ただ,腫瘍の局在や危険臓器と位置関係で治療が不可能な場合がございますので,ご了承いただければと思います.
ただ,甲状腺未分化癌は過去の治療実績は無く,また,ホウ素化合物の集積度合いも,他部位での未分化癌のデーターはありますが,甲状腺未分化癌に対しては全くデーターがありません.
甲状腺癌(乳頭状腺癌)の症例は数例ございますが,全例PR以上の治療効果は認められず,基本的には甲状腺原発の悪性疾患は,治療効果の薄い癌腫であると想定はしております.
以上,ご参考になれば幸いです.

Q.
先生のところで、多くの第Ⅲ相試験が、行われていると思います。 1。ご講演で示されたKeynoteー048のCPSが、今後、これらの治験のバイオマーカーとなりうるのでしょうか? 2。CPSを使った、negative trialは、ありますでしょうか? 3。光免疫療法の第3相治験が、走っていると聞いています。途中経過は、いかがでしょうか?

A.
本講演は、企業共催セミナーであることから、他社の企業の治験、他社の治療薬に用いられているCPSについては、回答できません。

Q.
免疫治療患者様の免疫機能解析(CyTOF解析、TCR解析、Neo-antigen解析等)を、やってられると、お聞きしています。これらの解析で、T細胞の活性化状態(例えば、疲弊しているとか)は、わかりますでしょうか?

A.
もちろん解析可能です。

Q.
トモセラピーの新しいプラットフォーム、ラディザクトのご紹介、ありがとうございます。耳鼻科医です。 上咽頭癌の患者さんで、聴力をできるだけ、温存したいのですが、従来のIMRTよりも、良いでしょうか?

A.
講演をご覧頂きありがとうございました。またご質問をいただきありがとうございます。
トモセラピーの特徴として線量集中性の高さがあげられます。
頭頸部癌の中でも上咽頭癌では原発巣病変が聴神経、視神経、側頭葉などの重要臓器に近接しておりますので、他のIMRTより難易度が高い治療計画作成が求められます。
さらに進行癌において原発病巣が進展するほど、標的への線量を十分に投与しながら正常臓器の線量を抑えられる装置の性能の差がより顕著になると思われます。
従来より上咽頭癌ではトモセラピー中心に治療を行ってきましたが、ラディザクトでは上咽頭の頭側に位置する脳実質や視神経・視交叉の線量低減が改良されておりますので治療精度が改善されたと考えています。
当院では頭頸部癌特に治療計画条件の難しい上咽頭癌はほとんどラディザクトで治療を行っていますが、このような背景が主な理由と考えています。

Q.
コメントです。 1。熱メスについて、開発初期に、基礎的な研究をしたことが、あります。この経験から、いわゆるlate effectがどの程度か、知っておく必要が、あると思っています。これは、エネルギーディバイス全体にも、言えることです。通常は、閉創してしまい、治癒の過程は、見ることは、ありませんが、自分がよく使うディバイスについては、知っておく必要が、あると思っています。いかがでしょうか?2。熱メスは、術中の触覚が維持されています。非常に、貴重なディバイスと、思っています。

A.
関堂先生:
1. 確かに閉創してしまうので、実際の創傷治癒が内部でどのようになっているのかはわかりにくいと思います。
しかし、皮膚切開使用後の創治癒の遅延なども文献的には報告されておりません。
また、皮下組織に関しては文献2. で耳下腺手術時に結紮、メスを用いた手技に比べて麻痺が少ない ということにより 損傷による創傷治癒の遅延は少ないのではないか と考えられます。

2.本機器の特徴であるメスと同様の構造で必要時のみ熱を通すことでメスと同様、止血時のみに熱を通すことによって結紮・電メスへの持ち替えなどの時間短縮が得られると考えております。

詳細は福田先生のご意見うかがいたいと思います。
以上です。

福田先生:
「late effectがどの程度か」に対して
小児外科3000例の報告によれば、創傷治癒は正常で、後期追跡時の瘢痕の美容的外観は良好で、コールドメスによる切開と同等であり、また創傷治癒の合併率はコールドメスによる合併症率と同様であったとの報告があります。
ラットを用いた創傷治癒と破断強度に関する研究によれば、コールドメスとショーメスの創傷治癒に差はなかったと証明されています。

耳下腺手術25例の術後顔面神経麻痺の発生率に関する報告では、ショーメス群が31%、従来群(電気メスとおもわれます)が43%と、電流滑走がない分、むしろ安全性を確認できているとのことです。

術中の触覚に関していえば、電気メスと異なりメスと同様組織に直接接することで、組織の硬さを感じることが出来ますし、ブレードの一点(一線というべきか)で切開するため、狙った部位を狙ったように切ることが出来る、有能な器具と考えます。

以下は参考文献です。

The Shaw haemostatic scalpel in paediatric surgery: clinical report on 3000 operations. Prog Pediatr Surg. 1990;25:39-47. doi: 10.1007/978-3-642-87707-0_5.

Parotid gland surgery using the Shaw Hemostatic Scalpel. Arch Otolaryngol. 1984 Nov;110(11):739-41.

Q.
A.質問です。1。bladeの長さは、どのくらいでしょうか?2。初期の機器で、bladeの破損1例、キレの悪化3例とありました。この機器は、単回使用に限られていますので、ご講演で示されている様に、改良が必要と、思います。先生は、手術の際は、いつも、予備を用意されていますか?B.コメントです。 手術には、触覚が大切と言われる先生も、多いかと思います。この危機では、満足されない先生がおられるのではと思いますが、いかがでしょうか?

A.
①bladeの長さは、どのくらいでしょうか?
回答:本講演でお示したデバイスの種類により、長さは異なります。

②初期の機器で、bladeの破損1例、キレの悪化3例とありました。
この機器は、単回使用に限られていますので、ご講演で示されている様に、改良が必要と思います。
先生は、手術の際は、いつも、予備を用意されていますか?
回答:予備は常に準備しています。

③コメントです。手術には、触覚が大切と言われる先生も、多いかと思います。
この機器では、満足されない先生がおられるのではと思いますが、いかがでしょうか?
回答:むしろ触覚を感じられるデバイスと考えています。
是非アクロサージをお試しいただき、ご体感いただければと思います。

第44回日本頭頸部癌学会