第33回臨床精神神経薬理学会学術集会

第33回臨床精神神経薬理学会学術集会

会長挨拶

第33回日本臨床精神神経薬理学会学術集会会長 上野 修一
第33回日本臨床精神神経薬理学会学術集会
会長 上野 修一
(愛媛大学大学院医学系研究科精神神経科学)

 第33回日本臨床精神神経薬理学会学術集会を、令和5年9月28、29日に道後温泉近くの愛媛県立県民文化会館にて行います。総会会長として一言ご挨拶申し上げます。

 まず、2020年第30回の本会は、愛媛県松山市で行う予定になっておりましたが、前年に始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により開催を中止と致しました。染矢俊幸前理事長、下田和孝現理事長先生には大変ご迷惑をおかけしました。この場をお借りして、皆様にお詫び申し上げると共に、今回、改めて開催させて頂く機会を作っていただいたことに感謝申し上げます。

 今回のテーマは、引き続き、「一から考え直す薬物療法」としました。精神疾患の治療において、薬物療法は、精神療法・リハビリテーション療法と並び必須のものです。そして、薬物療法を抜きにしては、生物学的基盤を持つ精神疾患の治療は成り立ちません。また、環境因が影響を与えている精神疾患にも薬物の補助が重要です。しかしながら、臨床家として目の前において、薬物の選択は重要ですが難しい問題です。精神科的診断や治療方針に加え、年齢、性別、身体疾患などの要因を含めて総合的に検討し、投与法も考えなければいけません。効果判定や終了時期、変更や置換、増強療法など薬物の追加についても、最新のエビデンスに加え、患者に合わせたナラティブな選択が必要となります。近年の分子医学的手法の発展により、患者さんの体質や状態に合わせた情報に基づく薬物療法が行われるようになりつつあります。操作的な診断基準と選択される薬物が一致する必要はありませんが、精神科領域でも科学的知見を反映させた多軸命名法 (Neuroscience-Based Nomenclature, NbN)が始まりつつあり、将来の薬物療法についての知識や情報も収集すべきでしょう。 1950年代に本格的に始まった精神科薬物療法は発展し、副作用少なく効果のある薬物が用いられるようになっていますが、一方、使用当初の作用機序から抜け出せるような、ブレークスルーはまだ行えていないところです。今回の総会では、これまでの精神科薬物療法の原点に立ち戻り、これからの精神神経疾患の治療について、改めて、考える時間とさせていただければと考えました。

 COVID-19の蔓延により学会活動もwithコロナとなってきました。会員の皆様が会場に足をお運びいただき、総会を楽しめる環境になるかどうか、まだわからない点も数々ありますが、精一杯準備させていただきます。そして、噛みごたえのある、味のある総会にしたいと思います。ご参加をお願い致します。