第73回日本病院学会 73rd Japanese Hospital Association Congress [動的平衡・スクラップアンドビルド-その先にある病院のカタチ-]

ご挨拶

土屋 誉
(公財) 仙台市医療センター 仙台オープン病院 院長

 この度、第73回日本病院学会を担当させていただくことになりました仙台市医療センター仙台オープン病院院長の土屋誉でございます。仙台での開催は昭和36年の第11回大会(東北大学島内武史教授)以来62年ぶりで、期間は2023年9月21日(木)~22日(金)の2日間、会場は仙台国際センターを予定しております。
 本学会の母体である日本病院会は、昭和26年に厚生労働省の指導で発足し、現在では全国約8000病院(150万床)のうち約2500病院(66万床)が会員として加盟しております。主な病院の団体で構成する四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)の中でも中心的な役割を担っており、より良い医療を提供するために病院内で働く様々な職種の研修会を開催し、更には病院機能の健全な発展のために医療行政への積極的な提言も行っております。
 全国の病院は、団塊の世代が後期高齢者となる2025年に向けて効率的な医療体制を実現するための地域医療構想への対応と、同時に解決すべき医師の偏在、医師の働き方改革など多くの課題を抱えております。更には新型コロナウイルス感染症パンデミックや大災害など予期せぬ事態への対応など、周りの状況の変化にいかに柔軟に対処するかが問われています。そのような状況を踏まえ今回の学会のメインテーマは 『動的平衡・スクラップアンドビルド-その先にある病院のカタチ-』 といたしました。生物は常に自己破壊と創造を繰り返し、動的平衡を保っているという生物学者の福岡伸一氏の言葉を引用したものです。病院も変わらないために変わり続けなければなりません。期間中、多くの先進的な演題の発表、活発な討論がなされ、今後の病院の行く末に大きな影響を与える学会にしたいと考えております。
 特別講演には6名を招待させていただきました。塩沼亮潤氏は仙台市出身で、金峯山史上2人目となる千日回峰行を達成した大阿闍梨です。大山健太郎氏は仙台に本社のあるアイリスオーヤマの会長で会社経営のプロとして第2回経営者大賞を受賞されています。山本雅之氏は東北大学医学部教授で環境ストレス応答の世界的権威でありますが、東日本大震災後に設立された東北メディカルメガバンクの機構長でもあり大規模なゲノムコホートを構築しました。賀来満夫氏は東北医科薬科大学特任教授で新型コロナウイルス感染症対策において本邦での指導的役割を果たされています。石井正氏は東北大学医学部教授ですが東日本大震災では石巻赤十字病院でDMATを率いて全国からの応援医療の統括をされ、今回の新型コロナウイルス感染症においては医療調整本部の責任者として最前線で活躍されています。渡辺幸子氏はグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン代表取締役社長で医療経済の面から多くのデータを用いて病院経営への積極的な提言を行っています。いずれも各界で活躍されていらっしゃる方々ですので貴重なお話が拝聴できると期待しております。
 現在もそうですが人類は感染症との戦いの歴史でもあります。仙台名誉市民の志賀潔博士は赤痢菌の発見者として多大な功績を残しました。本学会では志賀博士にまつわる展示ブースを設け、また近親者である志賀直史様の講演も企画いたしました。
 東日本大震災は多くの犠牲者を出した大災害でいまだその復興は道半ばです。宮城県では10568名の方がお亡くなりになり、1215名の方がいまだ行方不明の状態です。学会終了後の9月23日(土)には震災遺構を巡っていただくバスツアーも企画いたしました。
 仙台は東京から新幹線で2時間以内という利便性があり、東北の中心都市です。杜の都とも呼ばれ緑の多い環境です。周辺には仙台城址、日本三景のひとつである松島、蔵王、鳴子温泉、秋保温泉、作並温泉などの景勝地や温泉が多くあります。ぜひ、仙台にお越しいただき、学会参加とともに東北を満喫してい ただきたいと願っております。