第54回日本てんかん学会学術集会

ご 挨 拶



第54回日本てんかん学会学術集会 
会長 兼本浩祐 
愛知医科大学 医学部精神科学講座 教授 
てんかんセンター(成人)部長 
 
 第54回日本てんかん学会学術集会を2021年9月23日(木)~25日(土)の3日間、名古屋国際会議場で開催させていただくことになりました。 COVID-19がどのように落ち着くかが分からない中での学会となりますので、従来と随分違った形の学会になってしまうかもしれませんが、可能な限り学会というものが本来持っている「知らない者同士が出会うことで生まれるケミストリー」が損なわれないような形で行うことができればと願っています。

 今回の学会のテーマは「多様と凝集」と致しました。これは、てんかん研究の巻頭言にも書かせていただいたことなのですが、私のてんかん診療の原点である宇多野病院のてんかん病棟での体験に由来するものです。そこではやむを得ない事情からでもあったのですが、年齢は乳幼児から80歳までの老若男女、小学生から大学教授まであらゆる階層の方が集い、少なくともてんかんに起因する様々の出来事については驚くほど寛容で、これ以上ないほど多様でありながら、1つの濃密な共同体として機能していることが深く印象に残っています。市川忠彦先生に向けたてんかん学の泰斗、アンリ・ガストー教授の「てんかん診療というのは科学ではありません。それは患者・家族と奏でるシンフォニーなのです:という言葉は、私が学んだもう1人のヨーロッパてんかん学の泰斗、ディーター・ヤンツ教授の教えでもありました。ヤンツ教授が来日されたときに、患者の1人を教授の希望で診察していただき、私が細切れに逐語的に通訳をしていると、「君の仕方では会話の雰囲気がだいなしになってしまう」と嘆かれたのを思い出します。

 てんかんにおいては約3割の相対的難治例があり、この群は残りの7割と比較して医療資源のヘビー・ユーザーとなるため、数よりも大きなインパクトを持っていると思われます。この群においては精神症状が多く出現するだけでなく、社会資源の活用、臨床心理士・作業療法士・PSWなど多職種の連携が必要とされ、精神科において長年培われてきた思考法が特に必要とされる領域であると思われます。地味ではあるけれども、てんかんをもって生きるということを考えたときに、欠くことができないこうした領域のことをもう一度思い出しておく学会となればうれしいと思っています。

 多様という点では、アジアとの連携にもこの学会では特に焦点を当てたいと考えています。何人かのアジアのてんかん専門医の先生をCOVID-19の状況が許せばお呼びするとともに、YES-JAPAN(Japan Young Epilepsy Section)の協力も得て、若手の先生も招待する予定です。ドストエフスキーの研究者として有名な亀山郁夫先生の講演や、てんかんを懸け橋として神経学と精神医学を結び付けることをライフ・ワークとしていらっしゃるMichael Trimble先生の講演も予定しています。緩く、でもどこかで熱く集う学会になればと願っています。

 皆さまのご参加を心よりお待ちしております。