会長




第30回日本神経免疫学会学術集会 会長  藤原 一男
公立大学法人 福島県立医科大学多発性硬化症治療学講座 教授
一般財団法人 脳神経疾患研究所 多発性硬化症・視神経脊髄炎センター センター長

この度、第30回日本神経免疫学会学術集会を、2018年9月20日(木)と21(金)の2日間、福島県郡山市中央公民館・郡山公会堂において開催させていただくことになりました。2011年3月の東日本大震災からの復興の途上にある福島県での開催は初めてとなります。

神経免疫学、特に免疫性神経疾患における我が国の取り組みは、1970年台半ばの重症筋無力症、多発性硬化症の厚生省の班会議からであり、その後これらの班は厚生省特定疾患・免疫性神経疾患調査研究班として統合されました。この研究班では、両疾患のほかにもHTLV-I関連脊髄症、免疫介在性末梢神経疾患、炎症性筋疾患、自己免疫性脳炎など様々な疾患が取り上げられてきました。しかし「学際的で自由な研究発表と討議のための適切な場を創造する」ために研究班員の先生方が発起人となり1988年に日本神経免疫研究会が設立されました。その後第9回から日本神経免疫学会に名称を変え今日に至っております。

これまで本学会では、上記の中枢、末梢、自律神経、筋などの神経関連組織に関わる免疫学と免疫介在性あるいは炎症性の多様な疾患に関する新知見が蓄積され、学術及び医療の面から活発な議論が行われ、また将来のこの分野を担う人材育成の場にもなってきました。本学会員の研究は国内のみならず世界に発信され、国際的に注目されるアカデミックで質の高い研究も数多く生まれてきました。また2015年に難病新法が施行され指定難病は一気にその数が増加しました。また昨今、多くの疾患で診療ガイドラインが作成され、免疫性神経疾患でも日常診療に必要な情報がまとめて提供されています。本学会はこれらの作成や改訂にも大きな貢献をしてきました。

今回の第30回という節目の年の学術集会では、「神経免疫学に新たな1ページを加える」をテーマに選びました。全国から神経免疫学の基礎と臨床に真にインパクトのある斬新な研究成果を数多く発表していただきたいとの願いからです。シンポジウムやワークショップにそれらのホットトピックの演題を盛り込みたいと思います。また若手会員の研究を奨励するセッションを昨年までと同様に設けます。さらに国際性の観点から、海外の著明な研究者をできるだけ招きたいと考えております。日本の神経免疫学がさらに大きく飛躍していくには国際的に発信し交流することが必須です。また昨年は、免疫学的解析の具体的手法、症例提示の仕方や論文の書き方など、若手会員が臨床や研究を進めていきその成果を発表する際に必須事項に関する講演も大変好評でした。今回は、診断基準や診療ガイドラインの作成過程に関する解説や本学会の英文誌(Clinical and Experimental Neuroimmunology)への投稿をさらに推進するセッションも予定しております。企業との共催セミナーとしては、モーニングセミナー、ランチョンセミナー、イブニングセミナーで神経免疫疾患の診断や病態、治療に関する最新の話題を取り上げたいと思います。疾患や治療薬などの情報を提供する展示ブースのスペースも設けます。

本学術集会の会場となる郡山市中央公民館は東日本大震災で大きな被害を受けたため取り壊され、1年ほど前に現在の斬新な姿に生まれ変わりました。この新たな中央公民館はグッドデザイン賞に輝く極めてモダンな建物です。一方、郡山公会堂は90年を超える歴史があり、東日本大震災にも耐えその姿を保ち続けています。この震災で生まれ変わったものとそれを乗り越えてきたものが隣り合う場所で神経免疫学を皆で語り議論することは、とても意義深いのではないかと思っております。

福島県は、海の幸、山の幸が豊富で、美しい自然や名所も数多くあります。福島の食を堪能していただくと共に、郡山市近郊にある有名な三春の滝桜、野口英世記念館のある猪苗代、鶴ヶ城や白虎隊で知られる会津をはじめとする特色ある地域をこの機会に訪れてみてはいかがでしょうか。

多くの皆さんの本学術集会へのご参加を心からお待ちいたしております。