第28回遺伝子細胞治療学会学術集会(The 28th Annual Meeting of Japan Society of Gene and Cell Therapy)

会長挨拶

会長 米満 吉和

第28回日本遺伝子細胞治療学会学術集会(JSGCT2022)
会長 米満 吉和
九州大学大学院薬学研究院 革新的バイオ医薬創成学 教授

この度、第28回日本遺伝子細胞治療学会学術集会の会長にご推挙頂き2022年7月14日より16日(3日間)の会期で、福岡の地で開催させて頂くこととなりました。本来第26回学術集会を仰せつかっておりましたが、ご存知のごとく直前にコロナ禍による最初の緊急事態宣言が発令されましたことから、諸般の事情を鑑み、中止という苦渋の決断に至りました。従いまして、本第28回は、そのリベンジとなります。

わが国にとって新しい時代である「令和元年(2019年)」は、1989年5月に米国で世界初の遺伝子治療がADA欠損症で実施されてちょうど30年目、JSGT(JSGCTの前身)が発足して25年目となります。当初大きな期待とうねりの中で開始された遺伝子治療は、なかなか臨床効果を示せないまま1999年より相次いだペンシルバニア大での死亡例、X-linked SCIDにおける白血病発症という副作用が引き金となり、その後長い冬の時代に突入することとなります。

多くの研究者が遺伝子治療に見切りをつける中、遺伝子治療のポテンシャルを信じて一部の研究者が粘り強く研究を継続した結果、ようやく2017年にRPE65遺伝子治療製剤 (Luxturna®)、翌年にはCAR-T細胞製剤 (Kymriah®)、そして2019年には脊髄性筋萎縮症治療剤 (Zolgensma®)が米国で承認され、今や遺伝子治療製剤は世界中の製薬企業にとって大きな可能性を秘める新剤型として注目されています。そして何より、新型コロナウイルスと闘う強力な武器としてmRNAワクチン、そしてアデノウイルスベクターが市場に登場し、これまでのワクチンとは次元の違う効果を発揮し始めました。今後も、遺伝子治療製剤は続々と医療現場のリアルワールドへ投入されてくることになるでしょう。

そのような中、JSGCT2022は令和4年に第28回としての開催となります。まさに、前途洋々の船出とそれを阻む幾多の苦難をくぐり抜け、ようやく希望の光が見え出した最初の四半世紀を終えたばかり。つまり2020年から始まる10年は、JSGCTにとって2nd Quarterの始まり、そして新たなスタートの10年(decade)となります。

近年のJSGCTは、特に遺伝子治療や再生医療領域に関係する多くの研究者や製薬企業・周辺産業から大きな関心の対象となりつつあり、第24回(2018年)学術集会では参加数700名を突破致しました。この持続的な増加傾向は米国ASGCTも同様であり、2019年ワシントンDCではついに4,000名の参加者を超えたとアナウンスされました。このJSGCT2022ではワクチンの広がりによるコロナ禍の収束を期待し、完全対面での開催、そして1,000名の参加者を目標に、産学官を超えた日本の遺伝子細胞治療の大きなうねりを創出して行きたいと考えています。

博多の暑い夏に相応しい熱い議論が行われることを、学術集会関係者一同、心より楽しみにしております。