第36回JSCRS学術総会

会長挨拶

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第36回JSCRS学術総会

会長 市川 一夫

中京眼科

第36回JSCRS学術総会の運営を担当させていただくことになりました。
2020年は新型コロナの蔓延、それに伴う世界的な経済活動の委縮、東京オリンピックの延期等があり、様々な会合、学術集会でもWEB開催が当たり前となりました。2021年の学術総会も社会状況等を十分に見極め、参加される先生方の安全を第一に、開催方法を議論していく予定です。

今回の学術総会は「先見之明」をテーマとしております。四字熟語辞典(学研)によると、「将来を見通す眼力。先を見越して、あらかじめ準備したりする能力、聡明さ。」とあります。前者の意味は若干、予知能力を想起する言葉ではありますが、過去から現在に至る状況をしっかりと見つめ、今後の方向性を間違えなければ、自ずと将来を見通すことができると思っております。就中、自然科学分野である医学では、evidenceに裏付けられた医療が求められており、一歩先の将来はわりと確実に想像できるのではないでしょうか。また、後者の意味、あらかじめ準備する聡明さも非常に重要なものです。先を見通すだけでは何もしないのと同じです。この「先見之明」を眼科領域に当てはめてみますと、人生100年時代、白内障術後の30年、40年という人生を患者さんにいきいきと送っていただくため、「長期予後を考えた治療選択」が一つのキーワードになってくると思います。学術総会は、最先端の議論が行われる場ですが、日々、患者さんと向き合っている臨床医にとって、治療選択を増やす好機です。参加された先生方が一つでも多くの選択肢を持ち帰っていただき、患者さんへ還元できれば、これに勝る喜びはありません。

特別講演は、緑内障の大家である相原一先生(東京大学医学部眼科学教室 教授)にお願いしました。JSCRSは白内障と屈折矯正をその主なテーマとしておりますが、今回、あえて緑内障を一つの柱に据えましたのは、緑内障のことをより理解した上で白内障手術をすることによって、一歩進んだ医療の提供につながり、ひいては患者さんのためになると思ったからです。現在、私のクリニックに来られる白内障患者の1割ほどは緑内障も持っています。白内障手術時に緑内障をどう取り扱うかについては、諸外国も含めて多く報告がありますが、我が国ではまだ明確な指針がありません。そこで相原先生に、白内障手術時の緑内障の扱いについて留意すべき点をお話いただくことにしました。相原先生もこの講演を通じて、患者さんの健康につながり、日本の眼科医療の将来に役立つのであれば、ということで快諾いただきました。この場をお借りして感謝申し上げます。

次に、ぜひ取り上げたいと思い選んだテーマは、多焦点IOLの不適応症例についてです。多焦点IOLは、それまでの先進医療から2020年4月に選定療養へ移行し、同年12月のJSCRSウィンターセミナーでもセッションが企画された、旬な話題です。多焦点IOL挿入眼の術後レンズ入れ替えは一部を除いて保険適応外であり、多焦点IOLを希望する患者さんにとって、その適応不適応は重大事です。一定の指針を示すまでには至りませんが、先生方に「治療選択」を提供できれば幸いです。

その他、学術系・技術系で構成されるプログラム委員会およびオーガナイザーが編成した様々なセッションをそろえております。参加される先生方も十分にご満足いただけるのではないでしょうか。

一歩踏み込んだ(深掘りした)臨床、最新の医療が行えるよう情報提供をするとともに、先生方の日々の診療にお役に立てる学術総会を目指します。

副会長挨拶

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第36回JSCRS学術総会

副会長 湯口 幹典

愛知県眼科医会会長

第36回日本白内障屈折矯正学会開催に向けて

この学会は、人工水晶体研究会から始まり、日本眼内レンズ学会を経て日本白内障屈折矯正学会になったと聞いております。市川会長は学会のテーマを「先見の明」とされ、過去から現在に至る状況を見つめることにより将来を見通すことができるとされていますが、私も歴史が大切だと思っています。

私が大学病院に入局したのは1980年でしたので、その当時は白内障手術といえば、水晶体全摘出術(ICCE)の時代でした。初めて執刀したICCEのオペはレンズが破れないか、硝子体が脱出しないかハラハラしながら行った記憶があります。その後、嚢外摘出(ECCE)+眼内レンズ(IOL)の時代となり、さらに超音波乳化吸引術(PEA)が出現しました。IOLもPMMAからfoldableとなり、各種の多焦点IOLも出てきて、術者の選択は限りなく多くなって参りました。

最近は大学病院の専門が網膜硝子体に偏り、若い先生方もその方面を専門とする傾向があるようですが、やはり眼科の基本は屈折矯正です。屈折矯正を疎かにしがちですが、基礎を学ぶことは重要です。屈折矯正手術も非常に大切な分野です。一般には、やや敷居が高いところですが、今は、ただ手術をするだけではなく、いかに良い視力を得るか、いかに患者さんのためになる医療を提供するかという時代になっています。

開業しますと、なかなか時代の波に乗れないことが多くなりますが、このような学会で最先端の情報を得て、臨床の場に生かして頂ければ幸いです。

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