【目的】
我々は第44回日本眼科手術学会学術総会にて、高齢、短眼軸、視軸に対する水晶体傾斜の拡大が、回折型2焦点眼内レンズ（IOL）の術後近方視力不良に関わる因子であったことを報告した。今回、焦点深度拡張型IOLの術後視力に関与する術前因子を検討する。

【対象と方法】
2017年11月から2019年10月の間に、高畠西眼科でTECNIS Symfony®（AMO）を挿入した428例428眼（先行眼）を対象とした。術前因子として性別、年齢、眼軸長、前眼部光干渉断層計CASIA2（TOMAY）による角膜乱視、角膜球面収差、前房深度、水晶体直径、水晶体傾斜（視軸に対する水晶体の傾斜）を調査した。術後1か月の遠方（5m）と中間（70cm）の矯正視力別に、遠方良好群（1.2以上）と不良群（1.2未満）、中間良好群（0.9以上）と不良群（0.9未満）とに分け、多変量解析にて術前因子を比較検討した。

【結果】
遠方良好群は418例（年齢67.8±4.9歳）、不良群は10例（年齢69.6±5.1歳）で、いずれの術前因子も両群間で有意差を認めなかった。中間良好群は384例（年齢67.6±4.9歳）、不良群は44例（年齢70.1±4.9歳）で、不良群の方が年齢が有意に高かったが（p＜0.001）、眼軸長24.2±1.6mm、24.3±1.4mm、水晶体傾斜4.49±1.34°、4.53±1.10°を含め、その他の術前因子に有意差はなかった。

【結論】
焦点深度拡張型IOLの術後視力は、年齢が高いほど不良となる可能性が示唆された。眼軸長、水晶体傾斜との関連はなかった。

【利益相反：なし】

【目的】
連続焦点型レンズ（Synergy、J&J）と3焦点レンズ（PanOptix、Alcon）挿入眼の不快光視現象を演者らが開発したPhoticphenomena tes（t PPT）を用いて定量的に評価した

【対象と方法】
2019年8月から2021年1月に金沢医科大学病院で白内障手術を施行し、術後1～3カ月にPPTが可能だったSynergy群12例15眼（71±6.8歳）、PanOptix群52例94眼（61±10.0歳）を対象とした。7lxの薄暮環境下で眼前2m、眼部より30㎝下方に45,241 （cd/m2）の白色光源を提示し、光源周囲のグレア（GL）サイズ、ハロー（HL）サイズ、明度、太さ、スターバースト（SB）サイズ、明度をVisionSimulatorにより見え方を再現し計測した。

【結果】
Synergy群はPanOptix群に比べ、HLサイズ、SBサイズが有意に大きかった（p＜0.01）。GLサイズやHL明度、太さ、SB明度は両群間に有意差はなかった。

【結論】
両群ともに不快光視現象を自覚するが、Synergy群でより強いハローとスターバーストを自覚した。Synergyにおいて、職業運転手など夜間運転が多い場合は、十分なインフォームドコンセントが必要である。

【利益相反：あり】

【目的】
正確かつ迅速に視力検査を行う上で裸眼視力と屈折度数の関係を理解しておくことは重要である。若年者の近視眼における両者の関連性について多数例で検討し、推定視力の予測式を作成する。

【対象・方法】
矯正視力1.0以上で眼疾患を有さない261名261眼（平均年齢29.2±5.8歳、自覚等価球面度数-3.80±1.54D、乱視度数0.74±0.69D）を対象とした。遠方（5m）視力検査を行い、自覚等価球面度数と裸眼視力の分布を検討した。さらに、乱視度数による影響を検討するため、等価球面度数にて視力検査を行い、乱視度数と等価球面度数視力の分布を検討した。それぞれの分布の近似式から推定視力の予測式を作成した。

【結果】
自覚等価球面度数（x）と裸眼視力（logMAR）（y）の回帰曲線はy＝-0.046x2-0.501 x-0.133となり、各近視度数（D）における推定遠方小数視力は-1.00（0.48）、-2.00（0.21）、-3.00（0.11）、-4.00（0.07）、-5.00（0,06）、-6.00（0.06）であった。自覚乱視度数（x）と等価球面度数視力（logMAR）（y）の回帰直線はy＝0.195x-0.253となり、乱視度数が大きくなるほど等価球面視力は低下した。各屈折度数（D）における推定遠方小数視力は 0.50（1.43）、1.00（1.14）、1.50（0.91）、2.00（0.73）、2.50（0.58）、3.00（0.47）であった。

【結論】
若年近視眼の裸眼視力と屈折度数について調査し、推定視力の予測式を作成した。本予測式を念頭におくことで、正確かつ迅速な視力検査を行う上で一助になると考えられた。

【利益相反：あり】