第78回日本癌学会学術総会

学術会長挨拶

英知を結集してがん克服に

第78回 日本癌学会学術総会会長
石川 冬木
(京都大学大学院生命科学研究科 教授)
第78回 日本癌学会学術総会会長 石川冬木

 2019年9月26日より3日間、国立京都国際会館において第78回日本癌学会学術総会を開催させて頂きます京都大学の石川冬木です。近年、がん治療法は著しい発展を迎え、基礎研究の成果が臨床において実際に活かされております。悪性化をもたらすドライバー変異を標的とした分子標的療法の進歩は、これまで経験則に頼っていたがん治療から合理的に効果を期待できるものへと変貌させました。また、国際的な協力事業として行われている多くのがん種・患者検体のゲノム解析から得られた知識にもとづいて、個々の患者に最適と考えられる治療計画を実施することも可能になりつつあります。さらに、2018年度のノーベル医学生理学賞からも分かるように、がん免疫治療は多くの患者に有効である魅力ある治療法として注目を集めています。

 がんは、ダーウィン進化による選択によってより悪性度の強いクローンが生み出されることで生じます。このことは、がん細胞集団内に遺伝学的に異質な細胞が存在することによって可能ですが、遺伝的に安定な正常細胞と異なり、がん細胞はどのようにして適応度を過度に低下させることなく遺伝学的異質性を獲得するのかはいまだ十分に解明されていません。また、がんはがん細胞の自律的な変化によって生じるのではなく、それが存在する微小環境との相互作用によって悪性化を遂げます。相互作用の詳細をあきらかにし、それを新たな標的とした治療法の開発が進められています。さらに、次世代のがん研究は、これまでがん研究領域で行われてきた伝統的な研究手法だけでなく、生命情報学やシステム生物学などの新しい手法を導入することではじめてさらなる発展を得ることができると思われます。以上のように、がん研究はさまざまな研究領域・研究手法の相乗的効果によって進められるべきであって、本学術総会の標語を「英知を結集してがん克服に」とさせていただいた理由はここにあります。

 本学術総会では、基礎から臨床まで幅広い教育研究者が興味をもって討論に参加いただけるようプログラムを構成するとともに、本庶 佑博士をはじめとして国内外のトップサイエンティストの講演をうかがう機会をふんだんにもうけました。みなさま方がサイエンスを楽しんでいただければ幸いです。