ご挨拶

第61回日本アルコール・アディクション医学会学術総会
会長 白坂 知彦
(ことに白坂メンタルクリニック)

白坂 知彦 顔写真

 ようこそ北海道へ ― みんなで作る、出会いと対話の3日間に

 2026年度アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会の開催を迎えるにあたり、皆さまに改めまして心より御礼申し上げます。

 今回の学術総会では、全国各地から本当に多くのシンポジウム、ワークショップ、一般演題をご提案いただきました。大会長としてプログラムを眺めるたび、その一つひとつに込められた熱意と、この領域の広がりを感じています。アルコールや薬物の問題はもちろん、ギャンブルやゲームなどの行動嗜癖、若者への支援、身体合併症、地域医療、当事者・家族支援、基礎研究、さらにはハームリダクションまで、実に多彩なテーマが集まりました。また、国内だけでなく海外からも多くの先生方にご参加いただき、アジア・太平洋地域へと視野を広げた議論が行われます。

 これほど充実したプログラムを作ることができたのは、企画をご提案くださったオーガナイザーの皆さま、座長・演者をお引き受けくださった皆さま、一般演題をご応募くださった皆さま、そして準備を支えてくださった多くの方々のおかげです。プログラムを見ていると、改めてこの学会は大会長や実行委員会だけが作ったものではなく、本当に多くの皆さまの思いと力が集まって出来上がった、「みんなで作った学会」なのだと感じています。この場をお借りして、心より感謝申し上げます。

 そして学会は、プログラムが完成したところで出来上がるものでもありません。当日、会場に集う皆さまが発表を聞き、意見を交わし、偶然隣り合わせた人と語り、新しいつながりを持つことで、初めてその学会らしい姿が生まれるのだと思います。ぜひ皆さまにも、この学術総会を「参加する学会」としてだけではなく、「一緒に作る学会」として楽しんでいただければ幸いです。

 学会という場は、新しい知識を得るだけの場所ではありません。久しぶりに仲間と顔を合わせ、日頃の悩みを語り、思いがけない出会いから新しいアイデアが生まれる場所でもあります。どうぞ少し欲張って、普段は足を運ばない領域のセッションにも立ち寄ってみてください。きっと、ご自身の臨床や研究を少し違った角度から眺めるきっかけが見つかるのではないかと思います。

 そして、せっかくの北海道開催です。学会が終われば会場だけで一日を終えず、ぜひ札幌の街へ出てください。10月の北海道は、空気が澄み、食べ物も一段とおいしくなる季節です。懇親会はサッポロビール園で開催いたしますので、学問の話の続きも、少し学問から離れた話も、北海道の味覚とともに楽しんでいただければと思います。

 「受け継がれる依存症治療――変わっていくこと、変わらずにいたいこと」。

 このテーマのもと、これまで大切に受け継いできたものを振り返りながら、新しい時代の依存症医療を皆さまと一緒に考える3日間にしたいと思っています。

 この学術総会が、誰かから与えられる場ではなく、参加する一人ひとりが主役となり、みんなで学び、みんなで語り、みんなで作り上げる時間となることを願っています。

 どうぞ大いに学び、大いに語り、そして大いに北海道を楽しんでください。

 皆さまを札幌でお迎えできることを、心より楽しみにしております。

第48回日本アルコール・嗜癖関連問題学会
会長 芦澤 健
(千歳病院)

芦澤 健 顔写真

 この度、第48回日本アルコール・嗜癖関連問題学会を2026年 10月9日(金)~11日(日)の 3日間、札幌コンベンションセンターにて開催させて頂くこととなりました。第61回日本アルコール・アディクション医学会学術総会(会長 白坂知彦)と共に2026年アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会として、またThe 1st Congress of Asia-Pacific Society of Harm Reduction and Addiction(会長 宮田久嗣、顧問 齋藤利和)と共同開催いたします。我が国の依存症・アディクション問題は多岐にわたります。話題になることや、時事問題となることも少なくありません。様々な分野や領域の知の集結が必要となってきています。

 飲酒問題は健康障害としてすそ野が広がる方向にあります。アルコール依存症を断酒という取り組みだけでなく、減酒が目標となる選択が出てきました。また高齢者の飲酒問題、特に未治療の依存症、認知症の併発をどう対応するかが課題です。薬物では、繁華街で若者が処方・市販薬過剰摂取している情報がSNS等によって拡散し、地方都市でも同様の過剰摂取を繰り返す問題が出現してきました。ネット上で様々な薬物の購入が可能となっています。SNS等による情報拡散が薬物問題の傾向を変えていくかもしれません。オンラインゲームの問題が、若年者や発達障害と関連して新たなアディクションとして対応が迫れています。ギャンブルについてはパチンコ・スロットからネット上の競馬・競輪等が主体となってきています。さらに犯罪であるオンラインカジノが拡がりを見せ、時事問題化しています。ギャンブルの問題は、四六時中アクセスできる携帯によるネットを用いた射幸心を大いに刺激する形態となったため大きく変貌していくのかもしれません。最近の依存症・アディクション問題は従来の問題もありますが、新たな形としてネットやSNSとリンクした形で急速に広がっていくかもしれません。

 これらの問題は喫緊の課題と考えられます。社会がどのように対応していくか、治療、その後のサポートなどの問題が山積みです。そこで知の集結を鑑み、三学会の共同開催をすることとなりました。我々の学会は主に臨床の最前線にいる医療・心理・福祉等の治療者を中心に当事者との連携をしている学術団体です。全国からの多数の参加者が予定されています。さらに他の2学会からの参加から依存症・アディクションの学術的な最先端の研究が報告され、アジア・環太平洋からの参加や発表を募ります。三学会共同開催により、基礎医学・心理・医療・福祉・司法・教育・当事者支援など多領域の多職種が学際的な実践と研究を共有する実りある場となり、新たな方向性が得られればと考えています。

The 1st Congress of Asia-Pacific Society of Harm Reduction and Addiction
会長 宮田 久嗣
(東京慈恵会医科大学 精神医学講座、平川病院)

顧問 齋藤 利和
(札幌医科大学 名誉教授)

 2026年10月9日(金)から10月11日(日)の3日間、The 1st Congress of Asia-Pacific Society of Harm Reduction and Addiction(第1回 アジア環太平洋嗜癖とハームリダクション学会学術総会)が、第61回日本アルコール・アディクション医学会学術総会(白坂知彦会長)、第48回日本アルコール嗜癖関連問題学会(芦澤 健会長)との同時開催で札幌コンベンションセンターにおいて開催されます。

 Asia-Pacific Society of Harm Reduction and Addictionは、アジア環太平洋地域におけるハームリダクション活動や研究の推進を目的として2026年11月に設立された新たな学会です。ご存知のようにハームリダクション(HR)は、1970年代のヨーロッパでヘロイン乱用者が不潔な注射器を使い回すことでHIVが蔓延したことから、清潔な注射器を配布してHIV感染に歯止めをかけたことで知られています。その後、HRはさまざまに形を変えつつ、その基本的なコンセプトである人権尊重、人間理解、支援実践、偏見排除、問題解決などが評価され、近年は、WHOを始めとして多くの国でアディクションの予防、支援、治療に採用されています。一方で、HRはそれぞれの国や地域における物質使用の状況、文化・宗教的背景、司法・行政のあり方などの影響を受けるため、全世界共通のHRというものは存在しません。これまでは、HRはその先進国である欧米に目が行きがちでしたが、アジア環太平洋の諸国や地域でも、それぞれの事情や風土に応じた取り組みがなされています。たとえば、タイでは、仏教国であることから、その理念を活かしてHRを推進する祭日を作ったり、僧侶がHR活動を熱心に行っているそうです。このような現状を受けて、Asia-Pacific Society of Harm Reduction and Addictionの設立にいたりました。2026年の学術総会が第1回目の開催となります。アジアの隣人たちと、アジアのニーズに合ったHRのあり方について議論をかわし、新しい知識を得ることができればと願っています。