ご挨拶

会長 矢部 博興
福島県立医科大学・医学部・
神経精神医学講座

 2020年6月18日~20日の3日間にわたり、仙台市の仙台国際センターおよび東北大学川内萩ホールにて第116回日本精神神経学会学術総会を開催いたします。本学会の東北での開催は5回目、前回仙台で佐藤光源先生が第96回を開催されてから実に20年ぶりとなります。100回を超える伝統ある学会を主催させていただくことを大変光栄に思いますし、会員の皆様ならびに関係者の皆さまのご支援に心より御礼申し上げます。

本学術総会のテーマは、「今日の精神医学の検証-10年後への道標として- Critique on psychiatry today as a signpost for the next 10 years」とさせていただきました。

 2011年3月11日に発生した東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故による精神科病床の大量喪失、大規模な住民避難や健康不安、風評被害と差別の多重苦によってメンタルヘルスの危機に陥った東北の精神医療は、日本の精神医療福祉の将来を占う試金石です。つまり、精神科救急医療、アウトリーチと地域精神医療、児童精神医療、触法精神障がい者の医療、身体合併症を伴う精神障がい者の医療確保、自殺予防、アルコール依存症対策、認知症の医療福祉の充実、不足する精神科医療機関・精神科医師の確保など、日本全体の精神医療の課題が切迫しているのが東北です。この様な課題を抱える東北で本学会を開催することは大変意義のあることです。一方、国は2011年に省令改正により「5疾病・5事業および在宅医療」として精神疾患と在宅医療を医療計画に加え、精神保健福祉法も改正しました。2020年はこれらの成果を評価する重要な年でもあります。教育面では、起伏の末に新専門医制度の導入が2018年から始まり、現行の臨床研修制度と並んで2020年はその振り返りをすべき年となります。また、学部教育も新カリキュラムが導入され、2020年はその成果が試されます。研究面においては、2020年はNature誌が2010年の新年号巻頭言に「精神疾患のための10年」を発表してからちょうど10年目の総括の年にあたります。この10年で得られた精神疾患の解明につながる新しい知見や可能性のあるバイオマーカーについても本学会で議論する必要があろうと思います。昨今、精神医療の臨床の現場からは、確固たるバイオマーカーを持たないEBM精神医学の限界を問う声も少なくなく、世界と協調して歩んできた日本の精神医学を検証すべき時であろうと考えます。

 以上のように、2020年は現行の精神医療・医学の考証と将来への変革が求められる重要な年であり、国全体もオリンピックの開催で賑わいます。東北全体の学会員の皆様と共に、日本の精神医療・医学の未来にとっての道標となる学術総会を目指して参りたいと存じます。会員の皆さまの多くのご参加を心からお願い申し上げます。

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