第32回 日本エイズ学会学術集会
第32回 日本エイズ学会学術集会

ご挨拶

第32回日本エイズ学会学術集会・総会
会長:白阪 琢磨
独立行政法人国立病院機構大阪医療センター

 この度、第32回日本エイズ学会学術集会・総会のお世話を仰せつかりました。大阪での開催は4年ぶりとなります。

 1981年にAIDSの報告がされ、1983年にHIVが発見され、1987年には本学術集会・総会の名誉会長に就任いただいた満屋裕明博士らが米国で開発されたAZTが世界初の抗HIV薬として承認されました。1996年頃には現在の多剤併用療法が登場し、今では1日1回1錠の配合錠が新規処方の中心となっています。副作用も大幅に軽減されました。約30年の研究と臨床経験から、抗HIV療法は免疫不全症の発病から免れるだけではなく、炎症性血管炎などの合併症の出現も減らすことが示され、早期治療が強く推奨されています。抗HIV療法で感染者の血中ウイルス量を検出できないまでに抑え続けると、他への感染を大きく減じることも明らかになりました。HIV感染症は治療によって糖尿病や高血圧のような慢性疾患と捉えることができるまでになりました。

 わが国の現在のHIV医療を創り上げたのは治療の進歩だけではありません。1980年代後半には、血友病等の治療で投与された血液製剤によりHIVに感染した方々とその家族および彼らを支える方々による薬害HIV訴訟とその和解に繋がる生きるための闘いがありました。1996年3月29日の和解を機に、ACCの新設、ブロック拠点病院の選定、新規HIV関連薬剤の迅速審査、身体障害者手帳、中核病院制度等が推進され、現在のHIV医療体制の枠組みが作られたことを忘れてはならないと思います。

 本学会のテーマは「ゼロを目指して—今、できること。」といたしました。良好なアドヒアランスで感染者の血中ウイルス量を限りなく“ゼロ”にでき、ひいてはAIDS発症者を“ゼロ”に、合併症の出現を“ゼロ”に、感染者と非感染者の平均余命の差も“ゼロ”に、他への感染も“ゼロ”に、そして新規感染者も“ゼロ”にできると期待されます。未だに残存する偏見・差別もぜひ“ゼロ”にと願います。さらにセクシャルマイノリティーに対する偏見・差別を“ゼロ”にすることもエイズ対策で重要であることが示されています。

 本学会では12月2日~4日の学術集会・総会を大阪国際会議場で、12月1日~2日の市民に向けた様々なHIV/エイズ啓発イベント等を大阪市中央公会堂で開催します。後者は開館100年周年を迎える大阪が誇る国の重要文化財であり、近くには蘭方医緒方洪庵が1838年に開いた適塾もあります。ぜひ、両会場に足を運んでください。

 エイズ対策におけるもう一つの重要なキーは“私”です。本学会で、“私”が、何ができるかを見つけるきっかけになればと願います。

 多くの皆様のご参加をお待ちしています。

2017年12月吉日