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会長挨拶

 今回の学術集会のテーマを「ウイルス学のグローバリゼーション:グローバル化したウイルス感染症に対応するために」といたしました。1996年のWHO警告“感染症との戦いは世界的に危機的。もはやいかなる国も安全とはいえない”が的中した状況になってきています。ヒトのウイルス病とは、ウイルスと細胞、ウイルスと組織、ウイルスと宿主であるヒトとの相互関連の帰結、集積であるといえます。そして更に集団としてのウイルスとヒト社会との相互関連であります。ウイルスはその種の保存のため、繰り返された変異の中で、変貌する環境に適合したものだけを本能的に生き残らせます。一方生物として極めてヘテロな集団を形成するヒトは、その社会の中で弱者こそ守らなければなりません。感染者や発症者を守るために、ヒトは学び、“知”を集積し、それを共有して対応策を講じなければなりません。ヒトは新しいことを“知らなければ止まない”本能をもち、そしてそれを共有する知性を有します。そして弱者を守る優しさを本能として持っています。

 適者生存のため変異を繰り返すウイルス集団のなかでは、必ずしも強い病原性を獲得したものが生き残るわけではありません。変貌するウイルス集団を正しく認識し、解析し、対応する為に、ウイルス学は分子生物学、構造生物学、分子免疫学、数理統計疫学など周辺領域の最先端の知識に支えられた更なる発展、グローバリゼーションが期待されています。そして今こそウイルス学が期待される成果を挙げて、ヒトが新しい対応策を打ち出せる好機でもあります。

 2008年のノーベル医学生理学賞がウイルス学者のMontagnier博士、Barre-Sinoussi博士、そしてZurHausen博士に与えられることになったことは多くの若きウイルス研究学徒に大きな希望と夢を与えました。若き研究者達が、明確な目標を持ち、情熱をもってこの学界に船出したことに生き甲斐と誇りが見いだせるようなプログラムを作り上げて参ります。一方でウイルス研究は感染性粒子の産生に帰結するウイルスの生活環に基づくことが根本であるという日本ウイルス学会の哲学が正しく引き継がれる意義深い学会にしたいと念じています。

第57回日本ウイルス学会学術集会
会 長 宮村 達男 (国立感染症研究所)

Copyright 2008, The 57th Annual Meeting of The Japanese Society for Virology. All Rights Reserved.