会長挨拶

会長挨拶
血栓症への挑戦|第34回日本血栓止血学会学術集会 会長 内山真一郎(東京女子医科大学医学部神経内科学講座主任教授)

 この度、私は第34回日本血栓止血学会学術集会を主催させていただくことになりました。2011年は国際血栓止血学会が池田康夫会長のもと京都で開催され、本学術集会はこの国際学会に一丸となって全力を投入するため休会となりましたが、2012年は気分を一新して本学会が新たなスタートを切る大事な学術集会にしなければいけないと認識しております。
 本学会のテーマは「血栓症への挑戦」としました。血栓症は世界の死因の3割を占める人類最大の疾患であり、生活習慣病の蔓延と急激な高齢化社会の進行により、日本を含むすべての先進国で増加し続けています。本学会でも血栓症の比重は回を追うごとに増加しており、私は日本人に最も多い血栓症である脳卒中を専門としていることから、このようなテーマを選ばせていただきました。
 脳卒中、心筋梗塞、末梢動脈疾患といった動脈血栓症や、深部静脈血栓症や肺塞栓症といった静脈血栓症は、死亡や身体障害の主要な原因となっていることから社会的な関心も高く、このようなテーマを本学会で取り上げることは国民のニーズに答える意味でも意義が大きいと考えます。血栓症はあらゆる臓器の障害を生じることから、極めて多岐にわたる診療科が関与しており、学際的な疾患病態であるといえますが、学術的な観点からみても、本学会はその中でも中心的な役割を果たす使命があると信じています。
 平成23年3月11日、我が国は未曽有の大震災に見舞われ、多くの人命が失われました。この東日本大震災では、地震や津波の直接的な犠牲者のみならず、震災後に血栓症による心血管死も多く発生したことが報じられています。そこで、本学術集会では、特別企画として「震災関連死と血栓症」について大きく取り上げたいと考えています。今回の東日本大震災に限らず、日本は太古の昔から多くの大災害を経験してきました。火山列島に生活している日本人の宿命かもしれません。今後も常に震災に襲われる危険性に備える必要があります。今回の震災では、多くの医師が被災者の治療に懸命に取り組みましたが、本学会でもその対応に追われました。今後は、このような事態に迅速な対処ができる体制を本学会でも構築すべきです。本学術集会が、今回の経験を生かして、その第一歩を踏み出す機会になれば幸いです。
 抗血栓薬は長い間、アスピリン、ワルファリン、へパリンの時代が続きましたが、近年、分子標的薬が次々と開発され、新規抗血栓薬が臨床現場でも使用されるようになり、抗血栓療法は新時代を迎えています。また、血管内治療も新たなデバイスが次々と開発され、著しい進歩がみられます。血栓溶解薬と血管内治療のブリッジング療法も盛んに行われるようになりました。しかし、現在でも抗血栓薬の宿命的な副作用である出血性合併症のジレンマは未解決であり、デバイスに伴う合併症のリスクも払拭されておらず、さらに進化した薬剤やデバイスの開発が求められています。
 本学術集会では、以上のような背景を踏まえ、ベンチからベッドサイドまで、また逆にベッドサイドからベンチまで、基礎と臨床のクロストークによる活発な議論が展開され、日本発の多くのトランスレーショナルリサーチが芽生えるような契機となればと願っています。

平成23年6月吉日


第34回日本血栓止血学会学術集会