國土 典宏 国立国際医療研究センター 理事長

第24回日本門脈圧亢進症学会総会
会長 國土 典宏
東京大学 肝胆膵外科・人工臓器移植外科
国立国際医療研究センター

第24回日本門脈圧亢進症学会総会を2017年(平成29年) 9月14日(木)、15日(金)の両日、東京都中央区京橋の東京コンベンションホールに於いて開催することとなりました。日本門脈圧亢進症学会は門脈圧亢進症と食道胃静脈瘤に特化した世界的にみても例のないユニークな学会です。今回のテーマは私たちが没頭している分野に、あえて門脈学と名付け「門脈学の潮流-継往開来-」としました。

本邦ではおおよそ40人に1人が慢性肝炎に罹患しているといわれます。慢性肝炎は肝硬変へと進行すると共に門脈圧亢進症および消化管静脈瘤を合併します。この静脈瘤は突然破裂して生命を脅かし、かつては肝硬変患者の死因の3分の1を消化管出血が占め、多くの医師を悩ませてきました。歴史を振り返りますと、肝硬変患者を出血死から救うのに外科手術しか方法の無い時代が長く続きました。まず1877年ロシアのEckが報告した門脈下大静脈吻合術(門脈減圧手術)の臨床応用が1945年頃にWhipple、Blakemoreらにより開始されました。本邦では東京大学の木本により本術式が1949年に導入されましたが、3分の1以上の患者が術後肝性脳症を発生したため1964年にこれを中止することが宣言されました。その後は門脈圧を下げない食道離断術(直達手術)が東京大学の杉浦、出月、二川らによって開発され、Hassab手術などともに広く行われるようになりました。この術式は東京大学第二外科法と呼ばれ、2%以下という極めて低い再出血率が特徴でした。海外ではSugiura Procedureとして広く知られ、最新のSchwartz外科教科書にも取り上げられています。

一方、内視鏡的硬化療法は髙瀨、鈴木、二川、熊谷らによって導入され、その低侵襲性と優秀な治療効果から1980年代に爆発的に普及しました。この勢いを受け、1986年に食道静脈瘤硬化療法研究会が立ち上げられました。その後、Stiegmannらによって開発された食道静脈瘤結紮療法が手技の簡便さ、安全性などから1990年代以降急速に普及し、内視鏡治療が食道静脈瘤治療の中心となりました。もう一つの大きな流れとしてInterventional radiology (IVR)の発展があります。特に1991年に金川らによって開発されたバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)は胃穹隆部静脈瘤に対する第一選択の治療法となっています。外科治療も1990年代以降生体肝移植、脳死肝移植が可能となり、門脈圧亢進症の原因である肝疾患そのものを根治することが可能となりました。そして、これまでには治療の対象とならなかった重症例の治療も可能となっています。

諸先輩の英断によって1994年に日本門脈圧亢進症研究会と食道静脈瘤硬化療法研究会が合併し第1回日本門脈圧亢進症食道静脈瘤学会総会が開催され、1999年に名称が日本門脈圧亢進症学会となり今回第24回の学術集会を迎えることとなりました。歴史ある本学会は、診療科の垣根を超えて多くの医師が参集し研鑽してきた経緯があります。肝硬変を含む背景肝への治療、静脈瘤の発生部位や形状による適切な治療法の選択、難治例や肝不全合併例への外科治療の適切な時期など、その治療の前後で複数の診療科との連携、いわゆるmultidisciplinary teamのコンセプトが重要であると考えます。今回テーマとして掲げました「継往開来」とは、先人の事業を受け継ぎ、発展させながら未来を切り開くという意味です。これまでの門脈学の歴史を振り返りながら、将来の展望について活発な議論ができれば幸甚と存じます。なお、本学会総会が開催される京橋の徒歩圏内に銀座があります。舌鼓を鳴らし、議論を尽くすのはいかがでしょうか。