会長挨拶

 今回、学術集会のテーマとして、米国精神医学会から新しい診断基準「DSM-5」が作成されたことや国際診断基準「ICD-11」も、2014年に発表され翌年には導入予定であることから、「治療につながる操作的診断、新しい時代を見据えて」と掲げました。

 患者さんが受診されたときに、まず重要なことは、診断をつけることです。そして、診断に基づき、方針が決定され、治療が開始されます。診断は、その患者さんにとっては個人的なものですが、これまでの精神医学のエビデンスの蓄積により行われるべきで、そして、最適な治療を行うためのものとならなければなりません。また、それぞれの患者さんから得られた診療情報は、次の患者さんの診療に生かしていくべきです。どの時代においても、精神科医はそれを繰り返すことにより、将来の患者さんの治療につながる診断をしています。

 1980年代にDSM-IIIが発表され、日本に導入されたころから、操作的診断基準が一般化し、精神疾患診断に対する考え方は、若干変わったように思います。精神疾患の国際的な比較や治療効果の判定、医学研究の進展のためには、標準化した操作的診断基準が必要なことは誰しも認めるところです。ただ、現在用いられている操作的診断基準は、誰でもわかりやすく診断できる点で高く評価される一方、生物学的な基盤に基づかない点、治療と直結しない点、拡大解釈された点が弱点の一つとして取り上げられています。特に診断と治療が遊離している点は、現在の診断基準が経年疲労している印象をぬぐえませんでした。

 2013年に発表されたDSM-5は、米国を中心に医学的活動が行われている現在、本邦への影響も大きく、この学術集会が開かれる11月には、DSM-5がある程度浸透し従来の基準と比較できる時期と思います。また、新規に発表されるICD-11に精神科医として興味を持たない者はいないと思います。今回の学術集会が新たな診断基準を含め、治療のつながりについて、考え直す機会になれば幸いです。

 会場となる大和屋本店は、道後温泉のすぐ近くにあり、ゆっくりと落ち着いた雰囲気で、学問を考えられるところです。34回目となる歴史ある学術集会のお世話ができることを光栄に感じます。

 多くの方々のご参加を、スタッフ一同、お待ち申し上げます。

上野 修一
愛媛大学大学院医学系研究科 精神神経科学講座