ご挨拶

第11回日本うつ病学会総会を開催するにあたって

第11回日本うつ病学会総会
会長 山脇 成人
広島大学大学院精神神経医科学教授

山脇 成人

第11回総会を広島で開催するにあたり、ご挨拶申し上げます。

日本うつ病学会は10年の歴史を歩んできました。この間にうつ病患者は急増し、長期休職や自殺による経済的損失は2.7兆円に及ぶとの試算も報告され、大きな社会問題として国民からも認識されるようになりました。また、国としても自殺対策基本法の施行や、うつ病を含む精神疾患が5疾病5事業に組み入れられるなど、国策として重要課題となっています。

本学会の委員会活動は活発で、うつ病および双極性障害の治療ガイドライン作成をはじめ、いわゆる‘新型うつ病’に対する学術団体としての見解など数多くのメッセージを社会に発信してきました。しかしながら、現実には、複数の抗うつ薬治療によっても回復しない難治性うつ病の増加、適切なうつ病診断とそれに応じた治療が行われているのかなどの国民からの懸念、減少傾向とはいえ、高止まりしている働き盛りの男性自殺者に対するうつ病の早期介入、復職支援(リワーク)対策など、まだまだ課題は山積しています。

一方で、これまで‘こころ’の問題を科学的に解明することは困難と思われてきましたが、最近の脳科学研究の進展はめざましく、うつ病などの精神疾患の病態解明も可能になりつつあり、マスコミでも報道される機会が増えて、患者さんや家族をはじめ、一般市民も関心を持ち始めています。脳科学というといかにも難しそう聞こえますが、「うつ病はどうしておこるのか」、「うつ病の客観的診断は可能なのか」、「認知行動療法は脳のどこに効くのか」、「どこを治せば職場復帰できるのか」という患者さんたちからの素朴な疑問に答えられるべく、われわれ医療・保健従事者も、この課題に向き合うことは今後の新たなうつ病治療を考える上で避けて通れないステップと思っております。

第11回総会では、本学会の新たな10年のあゆみのスタートとして、「うつ病治療の再考〜脳科学からメンタルヘルスまで〜」をテーマとさせていただきました。これまで取り上げられてきた薬物療法、認知行動療法、リワーク対策、多職種チーム医療などの重要な課題の議論に加え、最新のうつ病の脳科学研究の成果を今後の治療にどう活かしていくかという課題も取り上げたいと考えています。日本うつ病学会総会には医師、薬剤師、看護師、心理療法士、社会福祉士など多職種の方々が参加されますが、うつ病に関する多方面からの議論や情報交流により、うつ病患者さんが、少しでも苦痛から解放され、その人らしく社会生活が営めるようにするための知恵を出し合う有意義な総会にできますことを願っております。

広島の地は、平和公園(原爆ドーム)、安芸の宮島という世界遺産がありますし、瀬戸内の新鮮で美味しい魚料理、名物お好み焼き、そして西条の酒など楽しみもたくさんありますので、是非、多数の皆様のご参加を期待しております。

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