ご挨拶

会長 竹村博文

会長 竹村博文

金沢大学 先進総合外科

 来たる2019年7月11日、12日に金沢にて、第24回日本冠動脈外科学会学術大会を開催させていただくことになりました。日本における死亡原因として悪性腫瘍に続いて多い心臓疾患、その中でも冠動脈疾患は日本人の生活様式の欧米化により、また今後も続く高齢化のなかで、ますます増加すると考えられます。それに対処するために1970年秋に冠動脈外科研究会が発足し、1996年に冠動脈外科学会として生まれ変わり、その後本邦における冠動脈外科の発展に大きく寄与してきました。

 しかし冠動脈外科を取り巻く環境は厳しくなってきており、2004年の薬剤溶出性ステントの導入以降、本邦の冠動脈バイパス手術(CABG)件数は減少しております。経カテーテル冠動脈形成術(PCI)は対CABGで10倍とも20倍あるいは、地域によっては100倍とも言われた時代があり、一気に衰退するのではないかと危惧されました。しかし天皇陛下の治療方針としてCABGが選択されたり、ガイドラインの改正後ハートチームでの検討が必要とされたりしました。特に糖尿病合併症例や、複雑冠動脈病変ではCABGの優位性が証明され、未だに1万5千人以上のCABG症例が行われています。これは単一術式としては最も多い術式であります。様々な手術術式の改良、グラフト選択の変遷などにより、待機手術死亡率は1.0%を下回り、世界に冠たる優れた成績を残してきたことに本学会は大きな貢献をしてきました。

 今回、学術大会のテーマを-潜心、そして、先進-(Deliberation and Advance)としました。潜心とは金沢が生んだ哲学者、西田幾多郎が使った言葉であり、じっくり心を落ち着かせて物事を考えるという意味です。今一度立ち止まり、冠動脈外科を見つめ直して、我々外科医も本当に正しいことを行なっているのか、その検証を本当にしているのか、これまで常識と思っていたことが本当に正しいのか潜心したいと思います。そしてその結果からさらなる発展のために、何をなすべきかをしっかり見極めて、先に進み(先進し)たいと考えました。

 加賀百万石を誇る前田家300年の歴史が生み出す、伝統と文化あふれる金沢の地で、本学術大会を開催できることはこの上ない喜びであり誇りであります。なるたけ多くの先生方にご参加いただき、歴史と伝統に奢ることなく、冠動脈外科の現在を見つめ直して(潜心)、将来へ向け、さらなる発展(先進)の礎になれるような学術大会にしたいと思います。