アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会

会長挨拶

会長 白坂知信  この度、2019年10月4日から6日まで、札幌市にて第54回日本アルコール・アディクション医学会学術総会を開催させていただくことになりました。日本アルコール関連問題学会との共同開催です。
 この数年多様な「依存性問題」を内包する社会問題、疾病が増加しています。私が医師になった40年前に、恩師の幹メンタルクリニックの齋藤利和所長が「これからの時代は酔いの文化が社会テーマになる」との話をされ、私が依存症専門医を目指したきっかけとなりました。芦澤会長のご挨拶にもありますように、多様な依存症・使用障害の悪化原因の一つとして「ドーパミン仮説」が脳科学の発展により有力視されています。依存症治療が心理社会的プログラムのみならず、薬物療法が有力な選択肢となっています。
 アルコール健康障害対策基本法が成立し、軽・中等度使用障害の患者様の受診しやすい社会となり、一般精神科のみならず身体科医療や産業医への受診者の増加も推定されます。薬物療法は有力な手段となるでしょう。また重症者は専門医療とのネットワークがますます重視されます。統合失調症、うつ病等の重複障害者の受診も著しく増加しており、依存症の悪化原因である原疾患治療の為にも、薬物療法がますます重要になっています。断酒薬、節酒薬以外にもドーパミンD3受容体の依存への関連が指摘されており、物質依存症以外の依存症への効果も期待されています。北海道での依存症専門治療病院への指定を求めて、数多くの医療機関が参加を希望しており、有効な治療法の情報提供と医療とのネットワークが大切な状況となっています。大会では海外の若手研究者との合同シンポジウムも予定されています。
 「基礎から臨床」まで、広く皆様と真撃な討論が出来れば幸いと存じます。
 本学術総会が実り多いものとなるよう、先生方の御支援と御参加、多数の演題応募をお待ちしております。



第54回日本アルコール・アディクション医学会学術総会
会長 白坂知信(医療法人北仁会 石橋病院)

会長 芦澤 健  この度、第41回日本アルコール関連問題学会を2019年10月4日から6日まで開催させていただくことになりました。第54回日本アルコール・アディクション医学会学術総会と共同開催です。2019年度アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会として開催します。
 メインテーマは、「時代背景としての依存症・アディクション問題」としました。社会をにぎわす様々な問題の背景に依存症・アディクション問題があることが少なくありません。一部列挙してみます。
 近年、飲酒運転による死亡事故があり、法律による厳罰化がすすみました。飲酒運転の背景にはアルコール依存症が相当数いるとされています。こうした中でアルコール健康障害対策基本法としてアルコール依存症含む不適切な飲酒の影響による心身の健康障害を総合的に対策する法律が制定されました。
 危険ドラッグが社会問題となり、法律の整備で危険ドラッグは激減しましたが、その使用を期待する者が減った訳ではありません。刑の一部執行猶予が始まり、覚醒剤事犯等の受刑者が早く出所してきています。違法薬物だけでなく、処方や市販薬の依存の問題もあります。
 パチンコ屋は全国津々浦々まで存在し、ギャンブルに問題のある人達は300-500万人いることが指摘され、わが国は世界でも有数のギャンブル大国と言えるかもしれません。さらにIRに関連する法が整備され、わが国でもカジノが誕生する方向にあり、わが国のギャンブル問題は一体どのようになっていくのでしょうか。
 痴漢、盗撮、強制わいせつ、ストーカー等の性の問題が有ります。不倫報道が随分とマスコミをにぎわし、また「#Me Too」運動としてセクハラの問題が世界的に話題になりました。性のアディクションをどの様にとらえるべきでしょうか。
 インターネット、スマホ等のゲームの問題が急速に広がっています。万引きや窃盗をクレプトマニアとしてどこまで治療すべきかの問題が有ります。投機的な投資はどこまで経済活動なのでしょうか。FXやビットコイン等の仮想通貨とギャンブルの境界はどうなっていくのでしょうか。
 多くの問題が、依存とアディクションの問題とリンクしています。しかし一方、依存症治療におけるハームリダクションの概念の広がりは、治療のゴールの多様性をもたらしています。また、自助グループが依存症治療で重要なことは自明ですが、高齢化等の問題で弱体化しています。治療対象の依存症の重複障害の問題が有ります。様々な問題が錯綜しています。
 皆様の多数のご参加をお待ちしております。



第41回日本アルコール関連問題学会
会長 芦澤 健(医療法人資生会 千歳病院)