第19回日本抗加齢医学会総会(19th Scientific Meeting of the Japanese Society of Anti-Aging Medicine)

会期:2019年6月14日(金)〜16日(日)、会場:パシフィコ横浜(〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1)

会長挨拶

  • 第19回日本抗加齢医学会総会
  • 会長 伊藤 裕
  • 慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科 教授
  • 慶應義塾大学百寿総合研究センター 副センター長

「異次元のアンチエイジング」と「美しさ」の希求―わたしがこの学会で目指すもの

2001年に創設された日本抗加齢医学会は、2019年第19回を迎え、わたくし慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授 伊藤裕が会長を仰せつかりました。慶應義塾大学は、アンチエイジングサイエンスの、わが国のメッカの一つであり、また、わたくしは現在、慶應の誇る百寿総合研究センターの副センター長も務めている関係から今回の栄誉を賜れたと考えております。まことに身の引き締まる思いであります。2019年、6月14日(金)から16日(日)まで、パシフィコ横浜国際会議場にて開催させていただきます。また、2018年、3月17日(土)東京大学伊藤国際学術研究センター伊藤謝恩ホールでわたくしを代表世話人として、「百寿社会の展望」シンポジウムを開催させていただきましたが、各界の反響が極めて大きく、ぜひ第二回目の開催をと強く要望され、本総会中に行うこととさせていただきました。

2019年は、畏れ多くも、今上天皇のご退位に伴い、平成の時代が終わり、新しい時代、新元号が冠される年となりました。この記念すべき年に学会を主宰させていただくこととなり、また、翌2020年には、東京オリンピック開催を控え、国民全体の意気が大いに高まる中、わたしは、全く新しい「抗加齢医学」のロケットスタートを切りたいと考えました。大会テーマ「異次元アンチエイジング―時空を超えた百寿の世界へ。」にはその思いが込められております。フィギュアスケーター、国民栄誉賞、羽生結弦選手の演技のごときパフォーマンスを生み出したいと思います。この大会で、わたしは、「抗加齢医学」の“Quantum leap(クアンタム・リープ)*”を目指します。

* Quantum leap(クアンタム・リープ)
―「量子跳躍」とは、物理学の用語で、原子内の一つの電子がある量子状態から別の状態へ不連続的に変化する現象。電子は、一時的に重ね合わせ状態にあった後、あるエネルギー準位から別の準位へ非常に短時間で「跳躍」できる。

前々理事長の吉川敏一先生、前理事長の坪田一男先生が一貫して目指してこられたサイエンスに基づくアンチエイジングの実現を目指し、わたくしも三年間、プログラム委員長として総会内容の多様性の確保とレベルアップに貢献してまいりました。この度の学会では、わたしの後を引き継いでいただいた、南野徹委員長のもと、多彩でバランスの取れた、内容の濃いプログラムを編んでいただきました。こころより感謝申し上げます。そこで、わたしは、今回はプログラム委員長の任を離れ、会長として、自由奔放に(?)、わたしの目指す「異次元のアンチエイジング」を提案させていただきたく存じます。

さて、巷では「100年人生」が叫ばれています。いま生まれた子供たちの半数は100歳まで生きることになります。人口減少と少子高齢化の中、社会のサステナビリテイー(持続可能性)に対する不安、そして平均寿命の延伸にもかかわらず、寝たきり、認知症に代表されるように、いわゆる生の尽きるまでの時間、「平均寿命(生命寿命)」と、自立して生きられる期間、「健康寿命」の格差はほぼ10年間あり、その差は一向に縮まる様相がありません。一方、最近、医学の進歩にもかかわらず、人間の寿命には限界があり、それは115歳程度と見積もられるとの報告がなされました。私たちは、この現実とどう向き合えばいいのでしょうか?

わたしは、100年生きる私たちの人生は、今後大きく二極化していくのではないか、と考えています。100歳まで生き生き溌溂と生活し、115歳の天寿を全うする人たちと、アップアップで、100歳まで何とかたどり着き、周囲の人の介助で辛うじて生きながらえる人たち。幸せな100年人生と、不幸せな100年人生。それを分けるものは一体何なのか?

「死ぬまでずっと幸せでいたい」それが、私たちの究極の願いではないでしょうか?私は、この考えから、最近もう一つの寿命の次元として、「幸福寿命」を提唱しています(「幸福寿命―ホルモンと腸内細菌が導く100年人生」 伊藤 裕 朝日新書)。「幸福寿命」の延伸に「抗加齢」の本質があると思います。そして、私は、一言でいうと、幸せに生きることとは、人生を「美しく」生きることだと思います。本当に「美しい」ということはどういうことなのか? この問題を、「美」に拘る本学会で、とことん、みなさんと考えたいと思います。

フランシス・ベーコンは、16世紀、その著「ノヴム・オルガヌム(新機関)」において、有名な"scientia est potentia" "knowledge is power" すなわち、「知識は力なり」、あるいは、「人間の知識と力とはひとつに合一する」という言葉を残しています。そして、「原因を知らなくては結果を生ぜしめないから」と続けています。ベーコンは、まず謙虚に、自然のふるまい(彼の言う、自然が有する「結果」)を観察して、そこから思索をめぐらし、推測しえた知識(彼のいう「原因」)を、精神の道具として実利に用いる、すなわち、人間が意図する「結果」を生み出すことが大切であると主張しています。サイエンスとテクノロジーの会合を初めて発想した人です。単なるサイエンスだけでは、「幸福寿命」は実現しません。それが「美」を生み出す力にまで昇華させることを目指す学会でありたいと考えております。皆様方の熱い力の結集を心より期待いたします。

 

大会ポスターについて ―童顔の伊勢海老―

伊藤先生イラスト

大会ポスター(図1)は、江戸時代の打掛着物「占連繩海老縫模様褂」(東京国立博物館所蔵)(図2)の文様をもとに、今回のテーマに合わせてわたしがデザインしました。 着物には、古来、健康長寿の象徴である、めでたい伊勢海老(腰の曲がるまで)と常若の象徴である松が描かれています。また、若年より老年に至るまで、災厄を払ってくれる、しめ縄があしらわれています。そこでわたしは、人間の寿命の限界とされる115歳までずっと生き生き溌溂として生きる、腰の曲がらない童顔の伊勢海老の像を中心に置き、しめ縄を遺伝子に似せ、さらに、しめ縄につけられている御幣(ごへい)、あるいは、幣束(へいそく)、幣(ぬさ)をヒストンタンパクと見立てて、環境、生活経験により遺伝子の働き方を自在に操作できるエピゲノム制御を担う化学修飾(メチル化、アセチル化)の様を描きました。背後には、広大な宇宙に、今日の抗加齢医学研究のフロンティアにあるゲノム編集、ミトコンドリア、腸内細菌、質量分析イメージング、そして、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)などの低分子代謝産物を配しました。

 

わたしの「抗加齢医学」―40年前の追憶

伊藤先生イラスト

これは、わたしが、1980年、医学部4回生のとき、所属していた京都大学医学部英語会話部が、西日本医学英語大会を主管した際、わたしがデザインしたプログラムの表紙絵です(図)。まさに、今からおよそ40年前、当時のわたしが夢見た「抗加齢医学」です。

それまで博物学が主流であった生物学に、実験と理論を両輪とする「分子生物学」が颯爽と登場し、1953年、ワトソン、クリックがDNAの二重らせんモデルを発見し、1961年、ジャコブとモノーが、酵素合成における遺伝子調節を説明するオペロン説を提唱しました。興奮状態のわたしは、当時、京都大学教養学部図書館で行われた超満員のワトソンの講演会を立ち見で聴講し、モノーの名著「偶然と必然」を読もうとしました(正直難しすぎました)。まさに分子生物学の興隆期でした。なんでもDNAでわかるという気風にありました。

それに先立つ1940年代、デルブリュックは、生物の形質を伝えるのはDNAであることを、バクテオリオファージを使って証明しました。図は、デルブリュックの盟友ルリアが示した電顕像をもとにイメージしたもので、大腸菌の表面に降り立ったファージが自らのDNAを、まさに大腸菌に注入し、その生命を増殖させようとしている姿です。わたしには、月面に着陸したアポロ11号のイメージが重なりました。わたしは、そこに、遺伝子の途轍もない力を感じました。そして、将来「不老長寿」も実現するのではないかと夢想しました。図では、その思いを、翁の能面に託しました。当時、まだAI技術はなく、大学の授業では、フォートランのプログラムの書き方が教えられ、コンピューターは、効率の良い電気計算機程度の扱いでした。しかし、機械、ロボットの発達によって未来は書き換えられるにちがいないとの思いから、わたしは、翁の顔の中身には、目はフィルムカメラ(デジカメはなかった)、耳には、ヘッドフォン、そしてレコードプレーヤーとラジカセのテープを配置し(CDもなかった)、口の部分には、ダイアル式の電話機(!)、タイプライターを書きました。いまはもう絶滅したものばかりです。昭和の遺品です。しかし、いくら科学技術が発達しても、脳は、きっと機械に置き換わられることはないとの信念から、脳だけはそのまま描きました。40年たった今は、その信念すら、大いに揺らぐ時代となっています。

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